2016 年 2 巻 2 号 p. A_37-A_44
本研究は,ある区間を走行するプローブ車両の時空間軌跡情報から,当該区間での時空間交通状態を推定する手法の理論的な枠組みを考察するものである.これは,交通量センサが設置されていない区間や,災害時にセンサがダメージを受けて情報が得られない場合でも,各種の通信手段でプローブ車両の軌跡情報が得られれば,それを元にどのような交通状態になっているかを推定し,適切な交通運用施策の実施に役立てることを目的としている.論文では,Daganzo (2005) が提唱する交通量変分理論 (VT: variational theory)を最適化問題に緩和し,プローブ軌跡を境界条件としてではなく,評価関数に組み込むことで,現実的なプローブデータへの適用性改善を試み,数値実験を通して,VT を応用した交通状態推定に関する基礎的な考察を行う.