抄録
症例は79歳, 女性. 失語と右片麻痺を呈し, MRIにて左中大脳動脈領域に梗塞巣を認めた. 発作性心房細動を有したことから心原性脳塞栓症と診断, エダラボン投与による保存的加療を開始した. 出血性変化のため抗凝固療法は未導入であった. 第6病日に血清LDH, 肝酵素, CRPの急激な上昇, 尿沈渣にて円柱形成を認めた. 腹部造影CT, 腎血流シンチにて左腎梗塞と診断, 心房細動に伴う塞栓症と考えられた. エダラボン投与に関連したと考えられる急性腎不全が報告されているが, 一方, エダラボン投与下の腎不全が腎梗塞によるものであった症例も報告がなされている. 本例では腎機能障害を認めなかったが, エダラボンによる腎機能障害の機序を考えるには, 腎梗塞など, エダラボン投与という要因以外に明らかな腎障害の原因となりうる疾患を有する症例を除外した上での更なる検討が重要であると考えられる.