抄録
症状が階段状に進行した頭蓋内内頚動脈解離の1例を経験したので報告する. 症例は43歳女性である. 左片麻痺にて, 発症12時間後に来院した. pure motor paresisと, 頭部CT上右内包に小梗塞巣を認め, ラクナ梗塞と診断して抗血小板剤, 脳保護薬を開始した. 第3病日には右前頭葉領域に新たな梗塞巣が出現した. DSAにて右内頚動脈Carotid artery (以下C) 1-2の解離を認めたため, 抗凝固療法を開始した. 第11病日に意識レベルがJCS2に, 頭部CTでは中大脳動脈領域へ梗塞巣が拡大した. 第20病日の3D CTAにて右内頚動脈遠位部の閉塞が確認され, 第24病日に突然意識レベルがJCS100に低下し瞳孔不同を認め, 外減圧術を施行した. 第108病日のDSAにて右内頚動脈は再開通しており, 意識レベルJCS1, 左完全片麻痺にてリハビリ病院へ転院した.
頭蓋内内頚動脈解離は稀であり, 治療法についても議論の余地があるところである. 文献的な考察を加え報告する.