脳卒中
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原著
エダラボンの軽症脳梗塞患者に対する効果について-高血糖を呈した症例での検討-
緒方 利安矢坂 正弘湧川 佳幸井林 雪郎岡田 靖
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2008 年 30 巻 1 号 p. 45-49

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抄録

【背景と目的】入院時高血糖は急性期脳梗塞の神経症状増悪関連因子として注目されている。今回、高血糖を呈する軽症脳梗塞患者におけるエダラボンの退院時転帰へ及ぼす影響を明らかにする目的で、単変量及び多変量解析で検討した。【方法】対象は2002年1月から2005年9月までに当院に発症7日以内に入院した虚血性脳血管障害連続872例中、入院時のNational Institute of Health and Stroke Scale(NIHSS)スコアが1以上、かつ4以下の患者425例の中で入院時高血糖(≥200 mg/dl)を呈した32例である。退院時転帰がmodified Rankin Scale(mRS)で0または1であることと背景因子や治療との関連性を調べ、単変量でp<0.10を独立変数、mRSが0または1であることを従属変数としてLogistic regression analysisで解析した。【結果】単変量解析では入院時NIHSSと退院時mRSに負の相関関係がみられ(p=0.036)、エダラボン投与群(93%)が非投与群(64.7%)よりmRS0∼1の占める割合が高い傾向を示した(p=0.051)。また、入院時クレアチニン値が異常値(男性で1.2 mg/dl以上、女性で0.8 mg/dl以上)を示した群(40%)がクレアチニン値正常の群(85.2%)よりも退院時mRS0∼1であった症例の割合が少なかった(p=0.023)。単変量解析で有意だったNIHSSスコア、エダラボンの使用、血清クレアチニン値の異常を独立変数、退院時mRSが0∼1であることを従属変数としたlogisteric regression analysisでは、NIHSSスコアが低値であることとともに、エダラボンを使用していることが予後良好と有意に関連していた(p=0.046)。【結論】エダラボンは、発症時に高血糖を呈している、軽症の急性虚血性脳血管障害の予後を改善させる可能性がある。

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© 2008 日本脳卒中学会
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