2008 年 30 巻 5 号 p. 689-696
(背景)脳梗塞慢性期治療の主眼は二次予防にあり,発症後数カ月以上経過し残存した運動麻痺への有効な治療は無かったが,全米ではリハビリと大脳皮質運動野電気刺激療法の臨床試験が行われ,期待される初期結果が報告されてきている.
(目的および方法)我々はこの適応条件に準じ,脳梗塞後4カ月以上が経過し上肢・手指に不全麻痺が残存している5例に対して大脳皮質電気刺激療法を実施した.脳梗塞発症から治療まで平均27カ月.Fugl-Meyer上肢運動機能評価で平均37点.Functional MRIで同定された上肢の運動領野直上の硬膜上に電極を設置する手術を実施.術後数日より一日4回,約1時間の電気刺激を行いながら作業療法を開始し,約1カ月で終了した.
(結果)全例で上肢運動機能評価は向上し(平均46点),その機能は持続した.
(結論)これまで諦められていた脳梗塞後慢性期の後遺障害に対する新しい治療となる可能性がある.