抄録
脳腫瘍との鑑別が困難であった脳アミロイドアンギオパチーの1例を報告する.64歳,男性.主訴は一過性の視野障害.初診時,神経学的異常所見は認めなかった.頭部単純CTで左頭頂葉から後頭葉にかけて低吸収域を認め,MRIでは同部位にT1強調画像で低信号域,T2強調画像,FLAIR画像で高信号域を認め,ガドリニウムによる造影効果は見られなかった.左後頭葉の病変は,18F alpha-methyl tyrosine-positron emission tomography(FMT-PET)にて集積を認めた.確定診断を得るため,開頭生検術を施行した.手術所見としては,脳回がやや腫大し,脳軟膜下表面に茶褐色の斑点が見られた.病理診断はcerebral amyloid angiopathy(CAA)with thrombosisで,免疫染色はamyloid βが血管壁に陽性を示した.本症例の病態としてCAAに血管炎を伴っていたため,FMT-PETで集積を認めたと推察された.