2010 年 32 巻 2 号 p. 203-206
症例は59歳の男性である.既往歴として左前頭葉の脳梗塞があり,軽度の超皮質性運動性失語を残していた.当時の頭部MRAにより,右前下小脳動脈は右椎骨動脈から分岐していることが指摘されていた.2009年9月構音障害の増悪と左半身の感覚障害を訴え救急受診した.来院時は左方への眼球共同偏倚が認められたが,入院後に核間性眼筋麻痺へと移行した.来院時の頭部MRAで右椎骨動脈の閉塞が認められ,入院後の頭部MRIで延髄上部から橋下部の右正中背側に高信号域の出現が認められた.右椎骨動脈の閉塞により橋の症状,病変が出現した稀な症例と考えた.