2010 年 32 巻 3 号 p. 282-289
症例は43歳女性.左片麻痺にて救急搬送され頭部MRIにて右大脳半球に脳梗塞を認めた.脳血管撮影にて両側の内頸動脈第一頸椎椎体付近に管状狭窄を認め,内頸動脈線維筋性形成異常症(FMD)に起因する脳梗塞と診断した.保存的治療を行うも徐々に神経症状が悪化し,MRIにて同側の脳梗塞の拡大および対側の脳梗塞を新たに認め,両側内頸動脈狭窄に対して経皮的血管拡張術を行った.術後,神経症状の悪化は認めず,左上肢巧緻運動障害は残存したが独歩退院した.本例のような進行性増悪を来す内頸動脈FMDに対しては両側同時に治療が可能である血管内治療が有用と考えられた.FMDに対してはバルーンのみの血管拡張術(POBA:Plain old balloon angioplasty)が第一選択とされているが,POBAに際しては内膜の断裂や解離が生じやすく,その場合にはステント留置が有用である.