抄録
私の生き様としての脳卒中研究の私的歴史について述べた.臨床医の研究のあり方はあくまで,日常臨床の場で患者さんと向き合い患者さんから研究テーマをいただき,その成果は患者さんの治療に応用できるものである必要がある.生命科学としての医学研究には,目先の治療に応用できるものではないが,近未来においてあるいは遠い未来において大いに人類の幸福に大きく貢献する内容もあろう.しかし,一方では,臨床家がカバーしなければならない研究テーマは広く,患者と直接向き合う臨床医でなければ発想できない研究に大いに努力していただく必要がある.現代の医学・医療の世界は10年たてば今の常識が非常識となるほど極めて早い進歩発展を遂げている.この点,日々更新してゆく必要がある知識と技術に対応してゆくためには,研究マインドを持った臨床医が求められている.また,日本の脳卒中医療レベルは世界一と評されているにもかかわらず,脳卒中診療医の日々の献身的かつ個人的善意に支えられているのが実情である.日本の脳卒中医療システムが社会のシステムとして健全に働くようになるよう,社会的活動も学会の使命として重要であることを認識し,会員が結束して医学・医療をより良い方向に導いてゆく努力が求められていると考える.