脳卒中
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32 巻 , 6 号
選択された号の論文の44件中1~44を表示しています
第35 回日本脳卒中学会講演
<会長講演>
総説
  • 小川 彰
    2010 年 32 巻 6 号 p. 515-524
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    私の生き様としての脳卒中研究の私的歴史について述べた.臨床医の研究のあり方はあくまで,日常臨床の場で患者さんと向き合い患者さんから研究テーマをいただき,その成果は患者さんの治療に応用できるものである必要がある.生命科学としての医学研究には,目先の治療に応用できるものではないが,近未来においてあるいは遠い未来において大いに人類の幸福に大きく貢献する内容もあろう.しかし,一方では,臨床家がカバーしなければならない研究テーマは広く,患者と直接向き合う臨床医でなければ発想できない研究に大いに努力していただく必要がある.現代の医学・医療の世界は10年たてば今の常識が非常識となるほど極めて早い進歩発展を遂げている.この点,日々更新してゆく必要がある知識と技術に対応してゆくためには,研究マインドを持った臨床医が求められている.また,日本の脳卒中医療レベルは世界一と評されているにもかかわらず,脳卒中診療医の日々の献身的かつ個人的善意に支えられているのが実情である.日本の脳卒中医療システムが社会のシステムとして健全に働くようになるよう,社会的活動も学会の使命として重要であることを認識し,会員が結束して医学・医療をより良い方向に導いてゆく努力が求められていると考える.
<シンポジウム1 >
総説
  • 堀江 信貴, 永田 泉, Tonya Bliss, Gary K. Steinberg
    2010 年 32 巻 6 号 p. 525-531
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    Cell transplantation offers a novel therapeutic strategy for stroke; however, how transplanted cells function in vivo is poorly understood. In this study, we test the hypothesis that grafted human neural stem/progenitor cells enhance the endogenous repair that occurs after stroke. Moreover, we summarize the results from present pre-clinical and clinical studies and focus on the potential mechanisms (angiogenesis, BBB integrity, axonal sprouting, dendritic branching, and inflammation) in functional recovery after cell transplantation.
    We found that transplanted cells affected multiple parameters in the brain with different kinetics: early improvement in blood-brain barrier (BBB) integrity and suppression of inflammation was followed by a delayed spatio-temporal regulated increase in neovascularization. These events coincided with a bi-modal pattern of functional recovery: an early recovery independent of neovascularization, and a delayed hVEGF-dependent recovery coincident with neovascularization. Therefore, cell transplantation therapy offers an exciting multi-modal strategy for brain repair in stroke and potentially other disorders with a vascular or inflammatory component. We also demonstrated that transplanted cells enhance axonal sprouting and dendritic branching of host neurons after stroke, and that these plasticity changes correlated with cell-induced recovery.
    The Stem Cell Therapies as an Emerging Paradigm in Stroke (STEPS) meeting was organized to bring together clinical and basic researchers with industry and regulatory representatives to assess the critical issues in the field and to create a framework to guide future investigations.
  • 黒田 敏, 七戸 秀夫, 杉山 拓, 伊東 雅基, 川堀 真人, 千葉 泰弘, 長内 俊也, 丸一 勝彦, 宝金 清博, 岩崎 喜信
    2010 年 32 巻 6 号 p. 532-537
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
  • 青木 友浩, 西村 真樹, 片岡 大治, 石橋 良太, 森下 竜一, 野崎 和彦, 橋本 信夫, 宮本 享
    2010 年 32 巻 6 号 p. 538-543
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    Cerebral aneurysm (CA) is a main cause of a lethal subarachnoid hemorrhage. Given the high incidence of CA in general population, the mechanisms of CA formation should be unlabelled and novel medical therapy for CA before rupture should be developed. The typical pathological feature of CA walls is the decrease of extracellular matrix (ECM). Decreased ECM results in the weakness of CA walls leading the enlargement and rupture of CA. In this article, we have reviewed the recent findings about the mechanisms of decreased ECM in CA walls mainly revealed by experiments using rodent CA models. ECM is the dynamic structure with the continuous synthesis and degeneration of matrix protein. In CA walls, the induced expressions of proteinases by chronic inflammation in arterial bifurcation are present and actively participated in the pathogenesis of CA. Further the synthesis of collagen is suppressed in CA wall through inflammatory stimulus in arterial walls. These results combined together indicate that both decreased synthesis and increased degeneration of ECM by chronic inflammation in CA walls contributes to CA formation. Further these results demonstrate the therapeutic potential of anti-inflammatory drugs for CA.
  • 鴨打 正浩, 吾郷 哲朗, 磯村 哲, 金谷 啓一郎, 粟野 秀人, 鈴木 一夫, 福田 賢治, 矢坂 正弘, 岡田 靖, 清原 裕, 佐渡 ...
    2010 年 32 巻 6 号 p. 544-551
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    脳梗塞は死亡,身体障害の主な原因疾患であり,社会に及ぼす影響は大きい.後遺症を減らすためには,できるだけ早く診断し,血栓溶解療法などの適切な治療を行うことが重要である.脳梗塞の診断や進行・再発,薬剤反応性の予測が血液検査により可能となれば,早期から最適な治療選択が可能となり有用と考えられる.血漿タンパク質はダイナミックレンジが広く微量タンパク質の測定は困難であったが,質量分析器の発達によりプロテオミクス技術は格段に進歩し,血漿タンパク質の網羅的なハイスループット解析が可能となっている.われわれは脳梗塞患者における血漿タンパク質の変化を経時的,網羅的に探索し,種々のタンパク質が急性期から慢性期まで変動していることを明らかにした(Research for Biomarkers in Ischemic Stroke, REBIOS).バイオインフォマティクスの手法を用いることで診断,予測マーカーを発見し,創薬ターゲットとなるタンパク質を発掘することが可能になると期待される.
  • 丸島 愛樹, 鈴木 謙介, 長崎 幸夫, 吉冨 徹, 藤 加珠子, 鶴嶋 英夫, 平山 暁, 松村 明
    2010 年 32 巻 6 号 p. 552-558
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    虚血再灌流に伴うさまざまな活性酸素種の発生は,虚血半影帯(ischemic penumbra)における組織障害を増強させることが知られており,虚血再灌流障害と呼ばれている.TEMPOなどのニトロキシルラジカルは,それ自身の酸化還元反応により触媒のように抗酸化作用を発揮することが知られている.しかし,生体内の抗酸化システムにより急速に還元されるため半減期が短く,また降圧作用などの副作用や毒性もまた臨床応用への課題であった.本稿では,これらニトロキシルラジカルの欠点を克服するために開発されたradical-containing nanoparticle(RNP)の特徴と,虚血脳組織への集積のメカニズム,フリーラジカル消去作用について紹介する.
  • 苗代 弘, 魚住 洋一, 佐藤 俊一, 川内 聡子, 小林 弘明, 長田 秀夫, 大谷 直樹, 和田 孝次郎, 都築 伸介, 島 克司
    2010 年 32 巻 6 号 p. 559-562
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    Objectives: It has been reported that near-infrared (NIR) laser irradiation is effective in cerebral ischemia. We examined the effect of 808 nm laser diode irradiation on CBF in mice. The potential of NIR laser irradiation in the treatment of cerebral ischemia was also investigated.
    Methods: Male C57BL/6J mice were used. An 808 nm CW diode laser was applied to the hemisphere transcranially. CBF was measured with a non-contact laser Doppler blood perfusion imager. We measured directly nitric oxide in the brain tissue during NIR laser irradiation. To confirm the effect of pretreatment by NIR laser irradiation, we conducted the 1.6 W/cm2 NIR laser irradiation to the hemisphere transcranially for 30 minutes before bilateral common carotid artery occlusion (BCCAO). The control mice were also subjected to BCCAO without pretreatment by NIR laser irradiation.
    Results: Transcranial NIR laser irradiation increased local CBF by 30% compared to control value in mice. NIR laser irradiation also provoked a significant increase in cerebral NO concentration. Pretreatment by NIR laser irradiation improved residual CBF following bilateral carotid occlusion in mice.
    Conclusions: Our data suggest that targeted increase of CBF is available by NIR laser irradiation and it is concerned in NOS activity and NO concentration. Besides, NIR laser irradiation may have a protective effect for transient ischemia.
短報
  • 安原 隆雄, 亀田 雅博, 馬場 胤典, 森本 尊雅, 菱川 朋人, 小野 成紀, 徳永 浩司, 三好 康之, 上利 崇, 伊達 勲
    2010 年 32 巻 6 号 p. 563-565
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    脳梗塞患者に対する電気刺激療法によって運動機能改善が得られるケースがあることは報告されてきたが,作用機序についてはほとんど解明されていなかった.われわれは急性期・慢性期脳梗塞モデル動物を用いて電気刺激療法の治療効果ならびに作用機序について検討した.急性期実験では,脳梗塞体積の減少と行動学的改善が得られ,特に抗アポトーシス効果や血管新生・グリア増生抑制効果が関与していることが明らかになった.慢性期実験では,同様の治療効果が得られたが,特に新生神経の遊走が電気刺激により著しく増強されることが明らかになった.さらなる研究が必要であるが,電気刺激療法は脳梗塞も含めた様々な中枢神経疾患に対して治療効果を有する可能性があり,期待がもたれる.
<シンポジウム2 >
原著
  • 北園 孝成, 鴨打 正浩, 中根 博, 尾前 豪, 杉森 宏, 吾郷 哲朗, 桑城 貴弘, 飯田 三雄, 佐渡島 省三
    2010 年 32 巻 6 号 p. 566-571
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    われわれは,共通の診断基準や治療方針のもとに福岡県の脳卒中基幹病院を対象施設とする多施設共同脳卒中データベースを構築した.福岡脳卒中データベース(Fukuoka Stroke Registry; FSR)は,同意を得られた発症7日以内の脳卒中患者の臨床情報,血漿,ゲノムの収集に加えてその後の予後調査を行う本格的な臨床疫学研究である.本研究では急性期脳卒中患者の発症登録による発症病態分析と要因解明を行うとともに治療成果の評価につながる研究を行い,本邦における脳卒中医療の基盤となるエビデンスを構築することを目的としている.平成19年6月に登録を開始して,平成22年2月までに入院した3,552例の患者の中で同意を取得しえた3,133例(88.2%)を前向きデータベースに登録した.また,後ろ向きデータベースには平成11年6月以降の対象症例5,515例の登録を行った.前向き登録症例の中で解析可能な2,950例の平均年齢は71.4歳,男性が1,877例と60%を占めた.2,441例が脳梗塞であり,その病型はラクナ梗塞633例(26%),アテローム血栓性脳梗塞565例(23%),心原性脳塞栓症547例(22%),分類不能例696例(29%)であった.危険因子の合併頻度は高血圧80.3%,糖尿病30.3%,脂質異常症45.3%,心房細動24.5%,飲酒37.9%,喫煙48.8%であった.脳梗塞各病型によって,各危険因子の合併頻度,入退院時の重症度や慢性期の再発率・ADLの推移が明らかになった.FSRでは2,000項目に及ぶ臨床データを集積しており,これらのデータを解析することで,脳梗塞の急性期病態や慢性期予後の解明に有用であると考えられた.
  • 今井 明, 鈴木 ひろみ, 渡辺 晃紀, 梅山 典子, 塚田 三夫, 中村 勤, 松崎 圭一, 加藤 開一郎, 冨保 和宏
    2010 年 32 巻 6 号 p. 572-578
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    脳卒中の自然経過を検討する目的で,生命予後と死因について調査し,AHAによる報告と比較した.対象は1998年4月から1999年3月に脳卒中を発症し,栃木県内で登録された5,081人である.発症から5年9カ月までの死亡の有無と,死因簡単分類で死因を調査した.生存率はKaplan-Meier法で算出した.脳卒中全体の5年生存率は62.3%であり,病型別の5年生存率は,くも膜下出血54.9%,脳出血57.9%,脳梗塞62.8%であった.死因の観察では,すべての病型で1位を脳卒中,2位を循環器系の疾患が占め,3位はくも膜下出血と脳出血では悪性新生物,脳梗塞では呼吸器系の疾患が占めた.くも膜下出血と脳出血では原疾患による急性期死亡が多く,75歳以上の脳梗塞では肺炎による死亡が多かった.AHAの報告によると,脳卒中の5年以内の致死率は男性47%,女性51%であり,栃木県の致死率は男性38.5%,女性36.7%とアメリカの報告より低かった.脳卒中の生命予後の改善には,急性期治療の充実と慢性期脳梗塞の肺炎に対する対策が重要と考える.
<シンポジウム3 >
総説
  • 田村 綾子
    2010 年 32 巻 6 号 p. 579-581
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    2010年7月日本で初めて79名の「脳卒中リハビリテーション看護認定看護師」が誕生した.看護職領域での認定看護師について紹介をするとともに,脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の誕生の経緯や教育内容について詳述した.
  • 橋本 洋一郎
    2010 年 32 巻 6 号 p. 582-588
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    1995年に看護師を中心に脳梗塞患者をケアしていく「脳梗塞安静度拡大マニュアル」を看護師が作成した.目的は,1)廃用症候群の予防,2)早期離床・早期リハビリテーション,3)患者の苦痛軽減,4)患者自身や家族に対して今後の治療方針の提示,患者にとっては目標,5)在院日数の短縮であった.済生会熊本病院で1996年に脳梗塞クリティカルパスに作り替えた.同時期にstroke unit(SU)の有効性が示されたが,SUやクリティカルパスの本質はチーム医療である.連携を強化する手段として「地域連携クリティカルパス」が登場してきた.脳卒中は,急性期は「疾病」,回復期は「障害」,維持期は「生活」と,病期によって対象が変化する.脳卒中地域連携では,「治療の継続」と「リハビリテーションの継続」が必要だが,「看護の継続」はその両者の中に包含されている.2009年より脳卒中リハビリテーション看護認定看護師制度が開始された.看護師が脳卒中診療において主導的役割を果たすことを期待している.
<シンポジウム4 >
原著
  • 岡村 耕一, 山口 竜一, 脊山 英徳, 丸山 啓介, 栗田 浩樹, 岡野 晴子, 小林 洋和, 西山 和利, 高橋 秀寿, 塩川 芳昭
    2010 年 32 巻 6 号 p. 589-594
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    The aim of this study to evaluate treatment results for brain hemorrhage at Kyorin University Faculty of Medicine. We treated consecutive 152 cases of brain hemorrhage. We studied to examine their treatment contents and mRS (modified Rankin scale) at the time of their discharge.
    The surgeries were performed for 53 cases. Outcome of cerebellar and subcortical hemorrhage was relatively satisfactory compared to other bleeding sites and mRS: 0–2 was recognized in about 40% of the cases. In contrast, outcome of brain-stem hemorrhage was poor, and it caused 30% of overall mortality.
    There has been no specific evidence regarding surgical intervention for brain hemorrhage. As for putaminal hemorrhage which is likely to develop pyramidal tract disorder, the functional prognosis tends to deteriorate easily compared to cerebellar and subcortical hemorrhage, and it was considered to be the limit for judging prognostic evaluation based on functional assessment. Decisions for surgical indication for severe cases and significance of lifesaving effects include important life ethical issues, which are to be worked on in order to establish decision making methods which can be effective with limited time and manpower and to combine them with the development and application of regenerative medicine in future.
  • 山本 拓史, 江崎 孝徳, 中尾 保秋, 森 健太郎
    2010 年 32 巻 6 号 p. 595-601
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    【対象】2001年1月~2009年9月順天堂大学静岡病院で治療した被殻出血351症例のうち,評価可能である124例を対象とした.血腫量と治療方法(保存的治療:CT群,内視鏡手術:ES群,開頭手術:MI群)に応じてそれぞれの退院時予後を比較した.【結果】血腫量 20~40 mlおよび血腫量40~80 mlでの比較ではm-RSに有意差はないが,ES群の死亡率が 最も低かった[(20~40 ml CT群:16.7%,ES群:5.1%),(40~80 ml ES群:5.9%,MI群:9.1%)].血腫量30~50 mlでは,退院時m-RSの平均がES群:3.9,CT群:4.5,MI群:4.6で,ES群の予後が有意に良好であった.【考察】軽症例,重症例では,内視鏡手術による機能予後改善効果は乏しいが,血腫量30~50 mlの中等症では,内視鏡手術で予後が改善された.血腫量50 ml以上では,低侵襲な内視鏡手術により回復期リハへの速やかな移行が期待できる.【結論】血腫量30~50 mlの被殼出血では,内視鏡下血腫除去術は有効な治療となりうる.
  • 酒向 正春, 大村 優慈, 藤井 良輔, 堀見 洋継, 石原 健, 石川 誠
    2010 年 32 巻 6 号 p. 602-610
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    【目的】被殻出血の急性期治療方針を回復期機能予後から検討した.【方法】対象は当院で回復期治療を施行した314例であり,治療方法別,年齢別,血腫量別,CT分類別,損傷側,性別,入院待機期間別に,FIM,BI,歩行自立度を統計学的に検討した.【結果】機能予後は年齢,血腫量,入院待機期間,CT分類別に,FIM,BI,歩行自立度で有意差を認め,保存的治療が良好な傾向を認めた.手術治療群は入院待機期間が有意に長期であった.年齢と血腫量を揃えた解析では,手術治療群は年齢が70歳未満で血腫量が60 ml以上に限定して,保存的治療群以上に良好な可能性を認めた.【結論】被殻出血の機能予後は保存的治療が良好な傾向であったが,限定症例には外科治療の定位的血腫除去術が推奨される.機能予後の向上には早期リハビリテーション体制の強化が急務であり,入院待機期間の短縮が必須である.
<シンポジウム5 >
短報
  • 菱川 朋人, 飯原 弘二, 山田 直明, 植田 初江, 伊達 勲
    2010 年 32 巻 6 号 p. 611-613
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    「不安定プラーク」は病理学,症候学,外科治療などの多面性を有しており,頸動脈プラークイメージングはこれらを客観的に評価する役割を担っている.われわれはMPRAGE(magnetization prepared rapid acquisition with gradient echo)法を用いたMRIによるプラーク性状評価を行っている.MPRAGEと症候学との関係については,有意な相関が報告されている.その背景となるMPRAGEと病理組織の比較検討を行った.プラーク内最大信号比は壊死性コアおよびプラーク内出血と有意に相関した.高信号(胸鎖乳突筋より200%以上)は低信号より有意に壊死性コアが大きく,プラーク内出血の程度が強かった.今後,MPRAGEと外科治療合併症との関係を検証することで,MPRAGEがより論理的な内頸動脈狭窄症に対する治療戦略構築に寄与することが期待される.
<シンポジウム6 >
総説
  • 猪原 匡史, 岡本 洋子, 高橋 良輔, 冨本 秀和
    2010 年 32 巻 6 号 p. 614-620
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    Insufficiencies of blood supply will more or less lead to brain dysfunction. Cognitive impairment caused by such cerebrovascular insufficiency was called vascular cognitive impairment (VCI), a clinical syndrome composed of a markedly heterogeneous group of diseases rather than a unique pathological process. It includes large vessel disease with strategic single or multiple strokes and small vessel disease with progressive damage to the basal ganglia and/or the white matter. VCI was previously believed to be distinct from Alzheimer’s disease (AD) resulting from a neurodegenerative process. However, such simple dichotomy needs to be reconsidered in light of the shared features between AD and VCI: these two disorders increase in prevalence with age, frequently occur concomitantly, and considerably overlaps in their symptomatology, pathophysiology, and comorbidity. So-called ‘mixed’ brain pathologies, mainly comprising of AD pathology and cerebral infarctions, are reported to account for most dementia cases in community-dwelling elderly people. Consistent with this notion, the contributors to attributable risks at death for dementia include small vessel disease and multiple vascular pathologies, which are no less than those of the main pathological hallmarks of AD, neocortical neuritic plaques and neurofibrillary tangles. Importantly, the multifactorial aspects of cognitive impairment have been incorporated in the dynamic polygon hypothesis, which takes into account the contributions of strokes of all sizes and white matter hyperintensities in parallel to those of plaques and tangles. In terms of the treatment of dementia, it is undoubtedly important to control vascular risk factors for the prevention of VCI. However, even in patients who have AD without cerebrovascular disease, treatment of vascular risk factors is associated with a slower decline in the Mini-Mental State Examination score. Therefore, physicians should always bear in mind that vascular risk factors need to be controlled to achieve a reduction in the risk of dementia, even if the dementia is caused by AD.
原著
  • 大沢 愛子, 前島 伸一郎, 山根 文孝, 松田 博史, 石原 正一郎, 棚橋 紀夫
    2010 年 32 巻 6 号 p. 621-627
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    内頸動脈狭窄症は血管性認知症の危険因子の一つと考えられている.本研究では,症候性内頸動脈狭窄患者に簡便な神経心理学的検査を実施し,内頸動脈病変や大脳白質病変,局所脳血流との関連について検討した.その結果,前頭葉機能検査の一つであるFrontal assessment battery(FAB)では,両側の高度狭窄を有する患者で全例に異常を認め,高度の内頸動脈病変を有する患者のスクリーニング検査として有用であると思われた.またFABを含む神経心理学的検査の結果は脳室周囲高信号域の重症度と関係しており,FABが両側前頭葉,視床,広範な右半球の脳血流と関係したことから,慢性的で広範な脳虚血が前頭葉を中心とした認知機能の低下に関連している可能性が示唆された.
総説
  • 山崎 貴史, 高野 大樹, 前田 哲也, 長田 乾
    2010 年 32 巻 6 号 p. 628-633
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    血管性危険因子の観点から血管性認知症(VaD)157例とアルツハイマー病(AD)59例を対象にSPECTを用いて脳循環代謝病態を検討した.VaD 157例中122例(77.7%)で前頭葉に,114例(72.6%)で側頭・頭頂葉の低灌流を認めた.VaDの病型別ではビンスワンガー型の76.8%,多発梗塞性認知症の87.2%で前頭葉の低灌流を認め,前頭葉の低灌流がVaDに特徴的な所見であることが確認された.ADでは全例に血液生化学検査,神経心理学的評価,MRIおよびSPECTを行った.MMSEの成績に対して年齢およびBNP,HOMA-Rは有意な負の相関関係を示した.MRI上で脳血管病変を有するA群は有さないB群と比較して,前頭葉に有意の低灌流を認めた.HOMA-R高値群で両側前頭葉内側面,BNP高値群では両側前頭葉内側面で有意の低灌流を呈した.脳血管病変を有するADでは前頭葉に低灌流を認め,血管性危険因子がADの病態を修飾している可能性が示唆された.
原著
<シンポジウム7 >
原著
  • 長谷川 泰弘, 茂野 卓, 岩井 良成, 鈴木 一成, 野崎 博之, 中山 比登志, 高橋 弘, 方波見 剛, 植田 敏浩, 佐々木 直, ...
    2010 年 32 巻 6 号 p. 641-646
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    【目的】tPA静注療法を念頭に置いた病院前トリアージとバイパス搬送を確立し,その効果の検証を試みた.【対象と方法】神奈川県川崎市では,脳卒中トリアージにシンシナティスケールを改編したスケール(MPSS)を用い,この点数に基づいたバイパス搬送を行い,搬送,診断,治療のデータをtPA静注療法施行病院と市消防署が共有して,半期ごとに検証作業を継続する体制を整えた.【結果】174例が2009年度上半期にMPSSトリアージ搬送を受け,145件(83.3%)が市内のtPA施行施設にバイパス搬送され,21例(12.1%)は市外へ搬送された.36例(23.8%)にtPA静注療法が施行され,tPA施行例の病着-静注時間は前年同期と有意差はなかったが,発症-静注時間は平均10分以上短縮した.退院時modified Rankin scale <2の率は42.9%であった.【結論】医療圏全体の評価にかかわる臨床指標の取得は可能であり,検証可能な連携医療の構築を進めることは,脳卒中医療の持続的な改善と均霑化に資するものと思われた.
総説
原著
  • 寺崎 修司, 平田 好文, 橋本 洋一郎, 山鹿 眞紀夫, 平野 照之, 森岡 基浩, 内野 誠
    2010 年 32 巻 6 号 p. 654-659
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    われわれは熊本地域で脳卒中地域連携パスを紙ベースで運用してきたが,データの保管や質の維持が困難なことや,データ収集と分析作業が繁雑であることなどの問題があった.これらを解決するために脳卒中地域連携パスの電子版を開発した.ファイルメーカーPro®を用いて紙の地域連携パスと同じレイアウトで作成した.入力後は印刷し,紙の地域連携パスとして運用し,入力したデータは各施設で保存し,後日電子データとして定期的に収集,連結し,分析することとした.ほかのデータバンクとのデータの相互移動のオプションも設定した.2009年10月に配布を開始し,従来の紙の地域連携パスと共存しながら,徐々に電子化導入を促進していった.2010年9月に1152症例のデータ収集を得た.個人情報の扱いについては今後もさらなる検討が必要である.
  • 山下 俊紀, 西村 敏, 頼住 孝二, 鈴木 光一, 高木 繁治, 瀧澤 俊也, 松前 光紀, 富永 二郎, 城倉 健, 小野 敦史
    2010 年 32 巻 6 号 p. 660-667
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    神奈川県内の脳卒中リハビリテーション基幹病院の立場で脳卒中診療における連携体制の確立のために地域連携パスの推進に努めているが,神奈川県におけるその広域・共通化に向けた取り組みの経緯と運用状況について報告する.神奈川県西部脳卒中地域連携懇話会では平成20年4月の運用開始から平成22年2月までに急性期計画管理病院10施設から625件の連携パスが発行され,計画管理病院での連携パスの利用率は44%であった.全県域13グループのうちで当院と連携を組んだ地域連携ネットワークグループは8グループであり,入院総件数760件の連携パスの利用率は41.7%であった.今後は,維持期関連施設との連携にも地域連携パスを利用して取り組んでいくことにしている.ゴールは,病病連携でなく地域連携であり,地域完結型医療連携だと考えるところである.
<シンポジウム8 >
総説
  • 山田 惠, 赤澤 健太郎, 西村 恒彦, 峯浦 一喜, 永金 義成, 中川 正法
    2010 年 32 巻 6 号 p. 668-674
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    磁気共鳴画像(magnetic resonance; MR)を用いた灌流画像(perfusion-weighted image; PWI)は90年代に登場し,脳卒中の領域でも注目されるところとなった.最も一般的に使用される手法は造影剤を用いたdynamic susceptibility contrast(DSC)法である.さてPWIの登場と同時に,これを用いて積極的治療の対象となる組織(ペナンブラ)が存在するか否かを判断する材料として使われ始めたのがdiffusion-perfusion mismatch(DPM)という概念である.しかし,その是非には異論があり,その一因は様々な大規模臨床試験におけるネガティブデータである.即ちDPMの存在が必ずしも血栓溶解療法の適応決定に有効な判断材料とならないことを示すデータが発表されたからだ.定量性に関しても困難であることを想定させる研究結果が散見される.また組織予後の予測に関してもPWIを使って達成することは比較的困難と想定されている.このような観点からはPWIの存在意義は揺らぎがちである.しかし脳灌流画像に求める情報を診断的情報(病態把握)に絞って考えた場合,その存在意義は比較的理解しやすいと思われる.即ち患者の血流状態を「可視化」することは診療の現場における診断の確信度を向上させることに直結し,治療方針の揺らぎを少なくすることが可能となる.このように初期スクリーニングの段階における病態把握という観点だけでもPWIはすでに十分な存在意義があると思われる.
原著
  • 木村 浩彦, 岡沢 秀彦, 新井 良和, 菊田 健一郎
    2010 年 32 巻 6 号 p. 675-679
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    Arterial spin labeling(ASL)は,脳血管内血液の磁化の状態を内因性のtracerとして利用する非侵襲的手法である.臨床的の現場で,すぐにperfusionの評価ができ,繰り返し撮像可能で,造影剤を利用しなくてもすむことの利便性は極めて大きい.3TMRI装置の普及とこの手法の技術的発展に伴い,小脳から頭頂部まで全脳の連続的灌流画像が得られる.CASLの臨床応用には,急性期脳梗塞,慢性閉塞性脳血管障害,Alzheimer病などの報告がある.慢性閉塞性脳血管患者で内頸動脈の狭窄や閉塞を伴う場合には,側副血管のためラベル面から撮像断面までのスピンの到達時間が極端に延長する状況が生じる.こうした場合は,たとえ血流が低下していなくても低灌流状態に描出されてしまい注意が必要である.STA-MCA血管吻合術後の簡便な血流評価などに利用可能と思われた.
<シンポジウム9 >
事例報告
  • 鈴木 明文, 中瀬 泰然, 吉岡 正太郎, 佐々木 正弘
    2010 年 32 巻 6 号 p. 680-683
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    rt-PA静注療法の認可を契機に住民への啓発,病院前救急医療システムの整備,院内診療体制の整備が進んでいる.しかし,rt-PA静注療法の施行例が激増しているわけではない.住民が脳卒中の可能性を判断し救急要請することについての啓発が十分ではないと思われる.日本脳卒中協会などによる全国的な啓発活動に加え,各地域では密接した方法で情報提供し理解を求めてきた.そのうち,講師から一方向的に情報が提供される講演会形式の啓発活動についてはその効果に限界があるように思われる.そこで,来場者が興味ある情報を自ら学習出来るイベント形式の啓発活動を行った.寸劇により脳卒中の症状と救急要請の仕方をわかりやすく紹介した.今後はこの形式で啓発を続ける予定であるが,一方では啓発効果の評価は難しく何らかの方法を開発する必要もある.
  • 齊藤 正樹, 米増 保之, 高橋 明, 吉田 英人, 大森 義範, 岡田 靖, 矢坂 正弘, 下濱 俊, 山本 和利, 寳金 清博
    2010 年 32 巻 6 号 p. 684-688
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    われわれは脳卒中にかかわる医療と福祉従事者(stroke care worker)にstroke teamを中心として教育活動を行ってきた.2002年より北海道中空知圏域の非脳卒中専門医療機関への教育を開始し,市民公開講座,PCEC/PSLS,ISLSを推進し,医学生および臨床研修医に加え,2010年には介護福祉従事者へ教育対象を広げた.この間,国家試験問題の解析から,多職種が受けた脳卒中教育の程度はさまざまであることを明らかにし,一般市民向けとは異なるstroke care worker向けの「脳卒中テキスト(仮称)」の作成を提案した.脳卒中学・医療の向上には人材教育が重要である.教育は,量から質を伴ったものへ,卒前から卒後まで,院内から院外へ対象を広げることが望ましく,標準教材の開発や「教育に協力することの意義」について市民へ啓発することも合わせて必要である.
  • 齊藤 正樹, 米増 保之, 山本 和利, 姉川 敬裕, 崎間 邦洋, 高橋 明, 矢坂 正弘, 岡田 靖, 下濱 俊, 寳金 清博
    2010 年 32 巻 6 号 p. 689-693
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    医学部卒業前教育としてt-PA教育とNIHSS講習会を新5年生時と初期臨床研修のマッチング直前の6年生時に行い,アンケート調査を実施した.講習会では脳卒中の現場からStroke team(医師,看護師,言語聴覚療法士)がインストラクターとして参加した.内容はスライドと脳卒中センターの看護師,患者とその家族から医学生に対するビデオメッセージとNIHSSの実技であった.講習会の結果,「脳卒中に関心がある」学生は55%から最終的に87%へ増加し,「脳卒中に興味がない」学生と「脳卒中にかかわりたくない」と感じる学生がそれぞれ40%から11%,5%から1%へと減少した.医学生の多くは脳卒中の講義の必要性を指摘しており,教材に現場のリアリティーを求め,講師に豊富な知識と経験,熱意などのプロフェッショナリズム,医師とは異なった視点からの助言を求めていた.
<合同シンポジウム1 >(日本脳卒中学会・日本脳卒中の外科学会)
総説
  • 峰松 一夫
    2010 年 32 巻 6 号 p. 694-696
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    筆者は,超急性期脳梗塞に対するrecombinant tissue-type plasminogen activator (rt-PA,アルテプラーゼ)静注療法の国内治験Japan Alteplase Clinical Trial(J-ACT),脳梗塞rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法適正治療指針作成に関った.本合同シンポジウムでは,本薬承認後に筆者らが関与した研究成果を概説し,さらに急性期再開通療法に関する世界の現状,今後の研究動向を紹介した.前者には,1)rt-PA承認後の急性期診療プロセスの激変,2)国立循環器病研究センターの初期治療成績,3)国内多施設共同登録調査SAMURAI register,4)市販後臨床試験J-ACT II,5)市販後使用成績全国調査(全例調査)J-MARSなどが含まれる.この間,海外では,投与可能時間の延長,MerciやPenumbraなどの血管内治療デバイスの開発,超音波血栓溶解法の検討などが進み,これらを組み合わせたハイブリッド再開通療法も試みられている.今後本邦で予定されている臨床試験のテーマも,6)治療可能時間の延長,7)発症後3~9時間目の脳主幹動脈閉塞に対するdesmoteplase治験,8)超音波併用血栓溶解,9)脳血管内治療併再開通療法など,目白押しである.
事例報告
  • 中川原 譲二, 峰松 一夫, 岡田 靖, 棚橋 紀夫, 永廣 信治, 森 悦朗, 山口 武典, J-MARS グループ
    2010 年 32 巻 6 号 p. 697-703
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    発症3時間以内の脳梗塞に対するアルテプラーゼ0.6 mg/kg静注療法の薬事承認後,一般臨床での安全性と有効性の検証を目的として,市販後調査研究(J-MARS)が行われた.2005年10月から2007年10月の間に,国内942施設から7492例の症例が登録された.Primary outcomeは,症候性頭蓋内出血(NIHSSスコア4点以上の悪化)の頻度と,発症から3カ月後の良好な転帰(favorable outcome:mRS 0および1)の頻度とされた.7492例を対象とした安全性解析では,症候性頭蓋内出血の頻度は,36時間以内が3.5%,3カ月後が4.4%であった.全死亡は13.1%,症候性頭蓋内出血による死亡は0.9%であった.一方,4944例を対象とした有効性解析では,3カ月後の良好な転帰の頻度は33.1%,mRS 6は17%であった.以上から,発症3時間以内の脳梗塞に対するアルテプラーゼ0.6 mg/kg静注療法は,日本人を対象とした一般臨床において安全かつ有効であることが確認された.
<合同シンポジウム2 >(日本脳卒中学会・日本脳卒中の外科学会)
事例報告
  • 岡田 靖, 森 真由美, 矢坂 正弘, 詠田 眞治
    2010 年 32 巻 6 号 p. 704-709
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    一過性脳虚血発作(TIA)は発症後短期間に高率に脳梗塞を続発し,早期の検査・治療開始が脳梗塞発症の危険性を低下させる.ABCD2スコアはTIA発症後早期の脳梗塞発症危険度を簡便に予測できる.さらに頸動脈狭窄の有無,MRIの結果などを加味して危険度を評価し,包括的な内科治療および外科的治療を含めた,病態に沿った治療選択が重要である.TIAは脳梗塞に至る直前,崖っぷち段階の予防期と認識し,急性脳血管症候群として急性期脳梗塞と区別せずに診療する.これからのTIA診療は,脳卒中医療の新たなパラダイムシフトと捉え,医療従事者,市民への啓発をいっそう推進していく.
原著
  • 上原 敏志, 峰松 一夫
    2010 年 32 巻 6 号 p. 710-718
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    わが国の脳卒中専門施設におけるTIAの診療実態を把握するために,日本脳卒中学会認定研修教育病院683施設を対象としたアンケート調査を実施した.日常診療で用いているTIAの定義は,「症状持続時間が24時間以内で,画像上の梗塞巣を問わない」との回答が48%,「症状持続時間が24時間以内で,画像上,梗塞を認めない」が42%であった.発症24時間以内のTIA患者が来院した場合の入院の適応方針については,「原則として全例,当日に入院させる」が64.4%と最も多く,「ABCD2スコアなどの脳卒中発症予測スコアを用いて判断する」と答えたのは7.5%のみであった.今回のアンケート調査により,国内専門施設のTIA診療はおおむね妥当であると思われたが,持続時間を1時間前後と定義した新分類や脳卒中発症予測スコアはほとんど普及していないことが明らかとなった.
総説
原著
  • 星野 晴彦
    2010 年 32 巻 6 号 p. 725-730
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    【目的】TIAの抗血栓治療について検討した.【方法】2005年から5年間に入院となったTIA 71例.【結果】TIAの病態はアテローム血栓性が20例(28.2%),心原性が12例(16.9%),その他が39例(54.9%)であった.入院中の抗血栓療法としては,アテローム血栓性TIAの27.3%は点滴による抗凝固と抗血小板の併用療法,45.0%が点滴による抗血小板療法が行われており,その他のTIAでも16.7%は点滴による併用療法,31.0%では点滴による抗血小板療法が行われていた.心原性TIAでは58.3%が点滴による抗凝固療法であった.退院時にはアテローム血栓性TIAの30.0%では2剤抗血小板薬が投与されていた.【結論】ガイドラインには推奨がないが,TIAの急性期抗血栓療法は脳梗塞と基本的には同様に点滴による治療が主体であり,入院治療を行うことが迅速な治療開始に結びつくと考えられた.
短報
  • 内山 真一郎, 中川原 譲二, 長田 乾, 峰松 一夫, 山上 宏, 岡田 靖
    2010 年 32 巻 6 号 p. 731-734
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    TIA is a medical emergency. Because, the risk of stroke early after TIA is very high. It has been reported that immediate evaluation and management of TIA substantially reduced the risk of subsequent stroke. Therefore, TIA patients should be evaluated and treated as soon as possible in a TIA clinic during 24 hours for 365 days. Based on these backgrounds, we conducted an international multicenter cooperative, investigator-driven, web-based observational study (TIAregistry.org). Five thousand patients with TIA or minor stroke (Rankin 0 or 1) within 7 days after the onset will be recruited and followed up for 5 years. The primary endpoint is non-fatal stroke, non-fatal MI or vascular death. The secondary endpoint is any vascular event or endovascular intervention. The investigational endpoints include quality of treatments, clinical manifestations, etiologies, times from first medical attention, and risk prediction scores. The background demographics include neurological symptoms, brain MRI and MRA, carotid ultrasonography, echo cardiography, blood pressure, CBC, lipids, and glucose. More than 5,000 patients will be recruited until July, 2011. Six Japanese stroke centers join the registry to recruit the target number of 300 patients. This registry may provide important information on evaluation and management of TIA as a medical emergency.
<脳卒中・血栓止血学会ジョイントシンポジウム>(日本脳卒中学会・日本血栓止血学会)
総説
  • 長尾 毅彦
    2010 年 32 巻 6 号 p. 735-739
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    ワルファリンは用量に著しい個人差があり,様々な薬物,食品との相互作用以外にも個々で様々な程度の耐性が存在しているといっても過言ではない.逆にアジア人種ではワルファリンが効きやすく,出血合併症を起こしやすいという意見もある.通常ワルファリン耐性とは1日15 mg以上必要な場合と定義され,その原因はコンプライアンス不良やビタミンK過剰摂取などのよく知られた要因と,先天的および外因による肝代謝活性の差(pharmacokinetic resistance),感受性の差(pharmacodynamic resistance)に大別される.そしてワルファリンの効果の個人差および人種差の原因が近年の遺伝子解析により判明しつつある.ワルファリンは消化管から速やかに吸収され,ほぼ100%肝臓でcytochrome P450(CYP)複合体により代謝される.薬剤としては2つの光学異性体が等量含まれており,このうちS体は抗凝固活性の約7割を担い,主に酵素CYP2C9により短時間で代謝される.R体は代謝酵素が異なるため,肝代謝の差は主としてCYP2C9活性の差に依存していると考えられる.他方ワルファリンは肝臓内ビタミンKサイクルの阻害により抗凝固作用を発揮するが,その作用はサイクルの主要酵素であるvitamin K1 2,3-epoxide reductase(VKOR)の活性に大きく影響されるために,この酵素活性の差により感受性の大部分が規定されることになる.このような特徴から,ワルファリンの場合は他の抗血栓薬と異なり,抵抗性ではなく過敏性を呈することがほとんどである.また抗凝固療法のモニタリングの根幹を成すPT-INR算出にあたって,使用するプロトロンビン時間試薬による差異も無視できないことが明らかとなった.
  • 梅村 和夫
    2010 年 32 巻 6 号 p. 740-745
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    クロピドグレルは,活性代謝物が血小板膜上のADP受容体であるP2Y12受容体に不可逆に結合し,ADPによる血小板凝集を抑制する.最近,クロピドグレルの抗血小板作用に個体差が存在し,低反応の患者ではリスクが増加することが報告され,その原因として薬物代謝酵素であるCYP2C19の遺伝子多型の関与がいわれている.クロピドグレルはCYP2C19により活性体(AM)となるが,その酵素が欠損している比率は欧米人では約3%に対して日本人では約20%といわれており,このことからクロピドグレルの個体差は日本人で,より大きいことが予測される.われわれは,AMの薬物動態,さらにAMと抗血小板作用との関係を健康な日本人を対象に検討した.47名の被験者に300 mgのクロピドグレルを内服させ,投与後の血液中AM濃度をLC/MSで測定した.また,20 μM ADP刺激による血小板凝集抑制率も評価した.CYP2C19酵素活性が低下した被験者の最高血中濃度および血中濃度曲線下面積は正常のそれらと比べると有意に低値であり,凝集抑制率が30%以下の低反応の被験者は47名中15名の32%であった.また,AMの薬物動態パラメータと血小板凝集抑制率はよい相関がみられた.AMの薬物動態はCYP2C19の遺伝子多型により影響を受け,AMと血小板凝集抑制作用との間にはよい相関がみられたことからクロピドグレルの抗血小板作用の個体差はCYP2C19の遺伝子多型によるAMの濃度の差が大きく関与していることが考えられた.
「脳梗塞t-PA 研究会」第4回研究集会
総説
原著
  • 高橋 智子, 加藤 秀明, 大山 秀樹, 新妻 博
    2010 年 32 巻 6 号 p. 751-755
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    【目的】地方病院でのrt-PA静注療法の現状を明らかにすることを目的とした.【方法】rt-PA静注療法を導入した2007年7月から2009年7月までの25カ月間に経験した脳梗塞の症例を対象とし,rt-PA静注療法を行った11例について検討した.【結果】11例のうち1例を除き治療効果を得ることができ,重大な合併症は認めなかった.軽症のためrt-PAを投与しない例の中に症状が悪化するものがあった.【結論】適正治療指針に従ってrt-PA静注療法を行うことにより,良好な成績を得ることができたが,当初軽症でrt-PAの適応なしと判断した例で後に症状悪化をみた例があり,軽症例に対する適応に関して検討の余地があると考えられた.
総説
  • 豊田 一則, 古賀 政利, 塩川 芳昭, 中川原 譲二, 古井 英介, 木村 和美, 山上 宏, 岡田 靖, 長谷川 泰弘, 苅尾 七臣, ...
    2010 年 32 巻 6 号 p. 756-761
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    国内10施設が参加した厚生労働科学研究Stroke Acute Management with Urgent Risk-factor Assessment and Improvement (SAMURAI) rt-PA Registryに登録された急性期脳梗塞患者600例(女性 223例,72±12歳)の,遺伝子組み換え組織型プラスミノゲン・アクティベータ(recombinant tissue-type plasminogen activator: rt-PA)静注療法の治療成績を,紹介する.治療後36時間以内に119例(19.8%,16.823.2%)に頭蓋内出血を,8例(1.3%,0.72.6%)に症候性頭蓋内出血(SITS-MOST定義)を認めた.3カ月後に199例(33.2%,95% CI 29.537.0%)が完全自立(modified Rankin Scale [mRS] 01)した.欧州のrt-PA適応基準にしたがって患者を限定すると,399例中162例(40.6%,35.945.5%)が完全自立し,この割合は他の国内外の市販後調査成績と同等であった.サブ解析で,MRI拡散強調画像での早期虚血所見や腎機能障害の存在が,治療成績と良く相関することを明らかにした.
事例報告
  • 岡田 靖, 山口 武典
    2010 年 32 巻 6 号 p. 762-769
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    適正治療指針2005の視点からわが国のrt-PA(アルテプラーゼ)静注療法について,禁忌項目,慎重投与項目,投与後の管理(抗血栓療法の制限)を中心に承認後2年間実施された使用成績調査の結果を検討した.rt-PA投与例に占める禁忌例は6.4%で,その19.5%が死亡している.禁忌項目の低血小板数(10万/mm3以下)合併例の死亡率は著しく高く,治療前収縮期血圧高値例では症候性頭蓋内出血の頻度が高かった.慎重投与項目の高齢・昏睡・NIHSS高値および抗血栓薬治療前使用例で転帰不良であり,適正治療指針2005は概ね妥当であった.一方,rt-PA療法後24時間以内の抗血栓薬使用例での症候性頭蓋内出血や転帰不良の頻度に有意な増加はなく,添付文書でもrt-PA療法後24時間以内の抗血栓薬併用は禁止とされていないが,適正治療指針2005では禁止とされている.この点については今後,慎重に検討すべきである.
短報
原著
  • 平野 照之
    2010 年 32 巻 6 号 p. 773-777
    発行日: 2010/11/26
    公開日: 2010/12/03
    ジャーナル フリー
    【背景および目的】MCA閉塞例での血管閉塞部位別の再開通率・転帰の違いを明らかにする.【方法】投与前MRAで計測した残存血管長から6時間,24時間での再開通を分けるカットオフ値を求め,ロジスティック解析によって有効再開通および3カ月後の転帰良好(modified Rankin scale 01)の予測因子を検討した.【結果】ROC解析から5.3 mmがカットオフ値となった.M1<5 mm 12例の再開通率(6時間16.6%,24時間25.0%)は,残り45例の再開通率(62.2%,82.2%)より有意に低く(p=0.008,p<0.001),転帰良好例も有意に少なかった(8.3% vs. 57.8%,p=0.004).ロジスティック解析では,残存血管長<5 mmのみが非再開通と転帰不良の予測因子であった.【結論】M1起始部閉塞例(残存血管長<5 mm)は,再開通率が低く転帰も不良である.
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