抄録
虚血再灌流に伴うさまざまな活性酸素種の発生は,虚血半影帯(ischemic penumbra)における組織障害を増強させることが知られており,虚血再灌流障害と呼ばれている.TEMPOなどのニトロキシルラジカルは,それ自身の酸化還元反応により触媒のように抗酸化作用を発揮することが知られている.しかし,生体内の抗酸化システムにより急速に還元されるため半減期が短く,また降圧作用などの副作用や毒性もまた臨床応用への課題であった.本稿では,これらニトロキシルラジカルの欠点を克服するために開発されたradical-containing nanoparticle(RNP)の特徴と,虚血脳組織への集積のメカニズム,フリーラジカル消去作用について紹介する.