2011 年 33 巻 2 号 p. 226-235
【背景】脳卒中発症には気温が最も影響する.発症時期については冬に多く夏に少ないとされるが一定しておらず,その理由として気象の影響の複雑さに加えて,観察期間の短さや対象数の少なさなど研究方法自体も指摘されている.【方法】全国労災病院において2002年度から2008年度に入院加療された全脳卒中症例46,031例を対象とし,脳卒中病型別に月別発症数を比較した.また気象区分から4つの地域に分けて検討した.【結果】脳出血は男女とも夏少なく冬に多発したが,北日本と西日本では最少月にひと月の差があった.くも膜下出血は女性に多く,夏少なく秋から冬に多発した.脳梗塞全体では明確な季節性は認めなかったが,ラクナおよびアテローム血栓性梗塞では夏に急増し1月に再増加という2峰性がみられ,心原性脳塞栓では冬場のみ多発した.【結論】地球環境の変化に伴い,生活環境や職場環境にも十分配慮した脳卒中予防対策が必要となる.