脳卒中
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症例報告
Antithrombin III低値を伴い経皮的血管形成術を行った静脈洞血栓症の1例
北惠 詩穂里大田 慎三
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2011 年 33 巻 2 号 p. 262-268

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抄録

症例は16歳男性,全身の痙攣と意識障害で発症した.頭部MRIではDWIで両側頭頂葉に境界不鮮明な淡い高信号域の出現を認めた.MRVおよび血管造影検査では上矢状静脈洞の描出が不良であり,静脈洞血栓症(CVT)と診断した.血液検査上antithrombin (AT) IIIの異常低値を認め,ヘパリンによる抗凝固療法では大量のAT製剤の併用が必要となると予測されたため血管内治療を選択した.ウロキナーゼを用いた局所血栓溶解療法を行ったが血栓の溶解は困難であり,バルンカテーテルを用いた血栓破砕を行ったところ再開通が得られ,意識障害と痙攣は速やかに改善した.以後はヘパリンとAT製剤の併用投与を継続し,後遺症なく回復したため退院となった.CVTでは抗凝固療法が行われることが多いが,重篤な経過をたどる症例もあり,特に凝固系の異常を伴う例では治療に難渋することがある.CVTにおいては早期の適切な診断と,その原因に応じて治療の選択を検討する必要があると考えられた.

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© 2011 日本脳卒中学会
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