2011 年 33 巻 4 号 p. 419-423
症例は16歳男性.相撲でぶつかり稽古の最中左後頭部の拍動性頭痛が出現していたが我慢して連日稽古を続けた.3日後に稽古中ぶつかった直後より,回転性めまい,右側の難聴,耳鳴りを発症し救急搬入された.突発性難聴疑いにて耳鼻科入院となった.翌朝より右末梢性顔面神経麻痺,右顔面の温痛覚低下,右上肢・体幹小脳性運動失調を認めた.MRIでは拡散強調画像で右前下小脳動脈(AICA)領域と右後下小脳動脈(PICA)領域に高信号域を認め,MRAで左椎骨動脈閉塞,脳底動脈狭窄と右側AICA閉塞を認め,同日当科転科し,抗凝固剤,脳保護剤を投与した.20日後に脳血管造影で右側AICAの再開通を認めた.症状は緩徐に軽快するも右難聴と体幹失調は残存し転院となった.本例の発症機序として,ぶつかり稽古による左椎骨動脈解離を生じ,解離腔の閉塞と同時に血栓性塞栓子を生じ,右AICAを閉塞したものと考えられた.