抄録
要旨:症例は89歳女性である.慢性心房細動に対し,ワルファリン内服中であったが,4カ月前から中止していた.意識障害と右完全片麻痺が出現し来院した.MRIでは左内頸動脈閉塞と左大脳半球の広範な脳梗塞を認め,心原性脳塞栓症と診断した.第7病日に除脳硬直と両側の病的反射が出現し,頭部CTではテント切痕ヘルニアと脳幹部に出血を認めた.テント上の占拠性病変による続発性の脳幹出血,いわゆるDuret出血と診断した.続発性脳幹出血は急速な頭蓋内の占拠性病変の拡大により生じることが一般的であり,比較的時間の経過した7病日に生じたこと,また脳梗塞に続発したDuret出血をCTで確認し得たことは比較的まれであると考えられた.大脳半球の広範な脳梗塞患者の急性期において,症状が急に増悪した際には,Duret出血も鑑別に考える必要がある.