抄録
要旨:未治療の高血圧症,脂質異常症,糖尿病の59歳女性.左半身脱力で受診し,右中大脳動脈遠位部分枝閉塞による脳梗塞の診断で入院加療した.初診時,症状は改善し神経脱落症状は認めなかったが,入院後に徐々に左上下肢麻痺の進行を認め,頭部MRIでは右中大脳動脈M1部穿通枝領域全域の梗塞を認めた.第14病日のMRAではじめて右副中大脳動脈の存在が判明し,中大脳動脈本幹起始部に高度狭窄を認めた.副中大脳動脈の頻度は0.3~4%と稀な血管変異である.本症例では中大脳動脈本幹閉塞により副中大脳動脈を中大脳動脈本幹遠位部分枝閉塞と判断したため,閉塞血管と梗塞領域が一致せず病態判断に苦慮した.閉塞血管と梗塞領域に矛盾がみられる場合は血管変異の存在を念頭に,診断および治療をすすめることが重要である.