脳卒中
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35 巻, 4 号
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総説
  • 緒方 利安, 永金 義成, 峰松 一夫
    2013 年 35 巻 4 号 p. 249-255
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/25
    ジャーナル フリー
    要旨:t-PA静注療法は急性期脳梗塞に対し有効な治療法だが,その適応は数時間以内である.治療時間枠拡大のために,治療が有効かつ合併症リスクの低い患者を抽出するための画像診断の確立が試みられてきた.DWIとPWIを用いた患者選択は脳梗塞治療のトピックである.近年,DWIとPWIのco-registrationでDWIとPWIの3次元的位置関係(topography)を正確に評価できることが明らかとなった.この方法で患者を選択し,発症3~6時間の脳梗塞患者に対するt-PA静注療法が有効である可能性が報告された.今後,ペナンブラの topographyを考慮した患者選択がt-PA静注療法の主流となるかもしれない.
原著
  • 川畑 和也, 安井 敬三, 長谷川 康博, 柳 務, 上原 敏志, 峰松 一夫, 祖父江 元
    2013 年 35 巻 4 号 p. 256-262
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/25
    ジャーナル フリー
    要旨:一過性脳虚血発作(TIA)診療における病診連携システムを構築するにあたり,一般開業医のTIAについての認識やその診療上の問題点を抽出する目的で,名古屋市内の当院近隣5区の内科系および外科系開業医495施設を対象に郵送法でアンケート調査を行った.回答率は32%であった.半数以上でTIA診療に何らかの問題を有しており,「TIAの症状かどうか自信が持てなかった」,「患者を紹介する基準がわからなかった」などの回答が多かった.また一過性の神経症状が出現し診察時に症状が消失したTIA患者を診療した場合に直ちに専門病院を紹介するのは約4割にとどまっていた.これらの結果は大阪地区での先行調査結果とほぼ一致しており,日本の他の地域の一般開業医においても共通した認識である可能性が考えられる.TIAの診断や紹介の基準を明確にして,開業医と脳卒中専門病院との連携を強化し,専門病院の受け入れ体勢を整える必要がある.
  • 鈴木 健太郎, 赤路 和則, 高橋 里史, 木村 浩晃, 狩野 忠滋, 神澤 孝夫, 谷崎 義生, 片山 泰朗, 美原 盤
    2013 年 35 巻 4 号 p. 263-268
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/25
    ジャーナル フリー
    要旨:【背景および目的】頸動脈ステント留置術は頸動脈狭窄症の治療法の一つであり,症例数は年々増加している.ステントもopen cell stentとclosed cell stentの2種類があるが,両者に明確な使用基準はない.当院の症例と過去の報告をもとに,最適なステント選択につき検討する.【方法】当院で施行した122例を対象とした.術後30日以内のmajor adverse eventsおよび70%以上の再狭窄例を抽出し,後方視的に検討した.【結果】Open cell stent使用例は89例(73.0%),closed cell stent使用例は33例(27.0%)であった.患者背景は,両者で有意差を認めなかった.術後30日以内のmajor adverse events 4例(術後塞栓性合併症3例,過灌流症候群1例)と70%以上の再狭窄3例を認めた.術後塞栓性合併症3例はいずれもopen cell stent使用例であった.再狭窄3例はいずれもclosed cell stent使用例であり,有意差(p<0.01)を得た.【結論】Open cell stentで術後塞栓性合併症を,closed cell stentで再狭窄が多い結果を認めた.
  • 田口 芳治, 高嶋 修太郎, 田中 耕太郎
    2013 年 35 巻 4 号 p. 269-273
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/25
    ジャーナル フリー
    要旨:【目的】頭頸部癌患者の頸部放射線治療後に発症する頸動脈狭窄病変(radiation-induced carotid artery disease: RCAD)の本邦における診療実態は不明である.そこでRCADに対する診療実態について検討した.【方法】全国の大学附属病院の耳鼻咽喉科,歯科口腔外科,放射線科医局に対して頭頸部癌に対するRCADに関するアンケート調査を行い,RCADの診療実態について検討した.【結果】213の大学附属病院から返答を得た(回収率57.9%).RCADの認知度については75.9%であった. RCADのために定期的に検査をしている施設は9.4%と少なく,積極的にRCADの予防や脳梗塞の予防を行っている施設はさらに少なかった.【結論】RCADのために定期的に検査を施行している施設は9.4%と少ない.今後,RCADに対して脳卒中医の積極的な診療介入が必要であると考える.
  • 角田 亘, 安保 雅博, 清水 正人, 笹沼 仁一, 岡本 隆嗣, 原 寛美, 木村 知行, 武居 光雄
    2013 年 35 巻 4 号 p. 274-280
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/25
    ジャーナル フリー
    要旨:【目的】健側大脳への低頻度反復性経頭蓋磁気刺激(以下,RTMS)と集中的作業療法(以下,OT)は,いずれも脳卒中後上肢麻痺に対する有効な治療的介入である.本研究では,これら2つの介入の併用療法の安全性と有用性を検討した.【方法】全国8つの施設に入院し本併用療法を施行された上肢麻痺を呈する脳卒中患者1,008人を対象とした.各対象は15日間の入院下で,20分間の低頻度RTMSと120分間の集中的OTからなる併用療法を計22セッション施行された.【結果】全患者が有害事象をみることなく本併用療法を完遂した.治療によりFugl-Meyer Assessment点数,Wolf Motor Function Testの課題遂行平均時間,Functional Ability Scale点数が有意に改善した.【結論】我々が考案した併用療法は安全であり,脳卒中後の上肢麻痺を改善する可能性が示唆された.
症例報告
  • 森 俊子, 岡崎 哲也, 蜂須賀 研二
    2013 年 35 巻 4 号 p. 281-286
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/25
    ジャーナル フリー
    要旨:前脳基底部健忘は,重度の前向性および逆向性健忘・人格変化を伴う作話・見当識障害・病識の欠如を特徴とする.今回経験した3症例では,前脳基底部に損傷が比較的限局した症例では,作話や記憶障害を認めたが遂行機能障害はなく,人格変化は比較的軽度で薬物により症状は改善した.一方前脳基底部を含めて前頭葉にまで病変が広がっている場合,遂行機能障害の合併,多動や多幸感などの人格変化,作話の持続が長い傾向があった.健忘の重症度やリハビリの効果においては両者で大きな違いはなく,エピソード記憶の改善は少なかったが,スケジュールノートを利用した反復訓練により日課的な日常生活は支障なく可能となった.
  • 押方 章吾, 一ノ瀬 誠, 原田 啓, 梶原 真仁, 白水 徹, 福山 幸三
    2013 年 35 巻 4 号 p. 287-290
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/25
    ジャーナル フリー
    要旨:未治療の高血圧症,脂質異常症,糖尿病の59歳女性.左半身脱力で受診し,右中大脳動脈遠位部分枝閉塞による脳梗塞の診断で入院加療した.初診時,症状は改善し神経脱落症状は認めなかったが,入院後に徐々に左上下肢麻痺の進行を認め,頭部MRIでは右中大脳動脈M1部穿通枝領域全域の梗塞を認めた.第14病日のMRAではじめて右副中大脳動脈の存在が判明し,中大脳動脈本幹起始部に高度狭窄を認めた.副中大脳動脈の頻度は0.3~4%と稀な血管変異である.本症例では中大脳動脈本幹閉塞により副中大脳動脈を中大脳動脈本幹遠位部分枝閉塞と判断したため,閉塞血管と梗塞領域が一致せず病態判断に苦慮した.閉塞血管と梗塞領域に矛盾がみられる場合は血管変異の存在を念頭に,診断および治療をすすめることが重要である.
  • 小守林 靖一, 久保 慶高, 幸治 孝裕, 西川 泰正, 小川 彰, 小笠原 邦昭
    2013 年 35 巻 4 号 p. 291-294
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/25
    ジャーナル フリー
    要旨:44歳,男性.頭全体の痛みを自覚し独歩受診.精査上くも膜下出血や脳梗塞は認めなかったが,左椎骨動脈解離を認め,2カ月おきに画像追跡を行い,半年後に左椎骨動脈の閉塞を確認した.なお,反対側の右椎骨動脈には異常所見は認めなかった.その後も画像追跡を行ったが,両側椎骨動脈には変化がなかった.最終画像追跡から2カ月後,左椎骨動脈閉塞から25カ月後に突然くも膜下出血を来した.右椎骨動脈-後下小脳動脈分岐部より近位側に紡錘状動脈瘤を認め,出血源と診断した.血行再建を伴った根治手術を企図したが,肺炎を合併したため待機手術の方針となった.2週間後に再出血を来し,死亡した.これまでの報告では,一側の椎骨動脈解離の自然閉塞または治療による閉塞後に対側の椎骨動脈解離によるくも膜下出血を来す期間は,14日以内であったが,本症例のように2年以上の長期経過後でも反対側椎骨動脈に解離が出現し,出血することがありうる.
  • 小阪 崇幸, 米持 康寛, 幸崎 弥之助, 田北 智裕, 俵 哲
    2013 年 35 巻 4 号 p. 295-300
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/25
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は38歳,女性.既往に過多月経を伴う月経困難症,前兆のない片頭痛あり.LEP(low dose estrogen progestin)製剤内服10日後より頭痛が出現.他院にて片頭痛と診断され,トリプタン製剤にて加療される一方,LEP製剤の内服は継続された.LEP製剤内服22日後,頭部MRIにて出血性脳梗塞を認め,当院に救急搬送された.脳静脈血栓症(CVT)と診断し,抗凝固療法にて加療.後遺症として軽度の純粋失読が残存したが,頭痛は消失し独歩退院.CVTの一因として経口避妊薬が知られている.本症例では月経困難症に対する治療目的のLEP製剤内服に加え,過多月経に伴う重度貧血を合併していた.近年LEP製剤は月経困難症に対し保険適用となったことで急速に普及しており,頭痛が認められた場合にはCVT発症の可能性を念頭に適切な対応が必要と考えられた.
  • 松山 友美, 佐竹 真理恵
    2013 年 35 巻 4 号 p. 301-305
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/25
    ジャーナル フリー
    要旨:2007年10月から2012年3月までの4年半の期間に女性ホルモン補充療法中に脳梗塞を発症した3症例を経験した.3例中2例は更年期症候群の症状緩和目的で,1例は骨粗鬆症改善目的であった.3例とも女性ホルモンタイプは結合型エストロゲンと酢酸メドロキシプロゲステロンの合剤であった.3例中2例に高血圧と脂質異常症,1例に喫煙の危険因子を持っていた.3例とも内頸動脈に粥状硬化,プラーク,狭窄を認めず,弁膜症,心房細動,動脈解離もなかった.いずれも5年以上内服,脳梗塞は軽症であった.女性の脳梗塞の場合は女性ホルモン補充療法有無の確認が必要とともにすでに投与された場合はその中止も検討すべきである.
  • 石川 等真, 植田 晃広, 新美 芳樹, 引地 智加, 河村 直樹, 島 さゆり, 宮下 忠行, 伊藤 信二, 朝倉 邦彦, 武藤 多津郎
    2013 年 35 巻 4 号 p. 306-311
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/25
    ジャーナル フリー
    要旨:61歳の右利き男性で,漢字にほぼ限局した漢字失書の1例を経験したので報告した.左角回から側頭葉にかけての深部白質の脳梗塞の発症約1カ月後と考えられる初診時には,ほぼ純粋な漢字失書を呈していた.発症1カ月後と6カ月後に小学校1,2学年で習得する漢字を用いて失書の程度と回復の過程を評価した.本例では,発症6カ月後には漢字失書はほとんど回復していた.また,漢字失書の分類では既報の左側頭葉後部障害例に認められているように想起困難が多く,次いで類形性錯書を認めた.漢字失書は画数の多い漢字に強い傾向が認められた.本例は,既報例と異なり語形認知領域(visual word form area)とされている左側頭葉後部から側頭葉底面の紡錘状回よりやや離れた頭頂葉よりの部分の白質での脳梗塞で漢字失書を認めており,漢字失書の発症機序を考える上で重要な症例と考えられた.
短報
  • 下畑 光輝, 渡部 裕美子, 田中 一
    2013 年 35 巻 4 号 p. 312-315
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/25
    ジャーナル フリー
    要旨:末梢性顔面神経麻痺および外転神経麻痺を呈した橋被蓋部梗塞の1例を報告する.症例は81歳男性.左末梢性顔面神経麻痺で発症し,当初特発性または糖尿病性顔面神経麻痺と診断された.その後外転神経麻痺を併発し,頭部MRI所見より左橋被蓋部の脳血栓症と診断された.抗血小板剤の投与により外転神経麻痺は消失したが,軽度の顔面神経麻痺が残存した.末梢性顔面神経麻痺の原因は極めて多彩であるが,橋被蓋部の小病変により末梢性顔面神経麻痺を単独または外転神経麻痺と併発し生じうる.症状の程度,優劣は病巣のわずかな偏倚によりいずれの神経核や神経線維が優位に障害されるかによって規定される.末梢性顔面神経麻痺を認めた場合,安易に特発性と診断せず,速やかにMRIによる脳幹病変の評価を含めた病因検索を行い,病因に則した治療を行う必要がある.
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