2015 年 37 巻 1 号 p. 26-30
要旨:88 歳の女性.日常生活動作は自立しており降圧薬内服中.ショートステイ中に倒れているところを発見され当院に救急搬送された.来院時,右共同偏視と左片麻痺を認めNIHSS スコア12点.心電図で心房細動を,頭部CT およびMRI で右中大脳動脈領域の新鮮梗塞像を認めた.超急性期心原性脳塞栓症と診断し,最終未発症確認時刻から3 時間58 分でアルテプラーゼ静注療法を開始しエダラボンを併用した.アルテプラーゼ投与開始1 時間37 分後に全身の発汗と血圧低下が出現し,心エコーで心囊液貯留および心尖部からの血液流出を確認した.胸部造影CT では大動脈解離は認めず心破裂の所見を得た.心囊ドレナージを行いつつ,カテコラミン投与と輸液負荷を継続したが,アルテプラーゼ投与開始20 時間27 分後に死亡した.非常に稀ではあるがアルテプラーゼ静注療法に伴って前兆のない心破裂があることを念頭に置く必要がある.