2016 年 38 巻 2 号 p. 116-119
症例は76 歳男性.心房細動に対してワルファリン内服中であった.右視床出血,脳室穿破の診断で緊急入院となり,保存的治療の方針とした.経過観察のCT では急速な脳室内血腫のwashout を認めていたが,発症2 日後に突然意識レベルが低下した.CT で急性水頭症が出現しており,原因は中脳水道に陥頓した血腫によるものと判断した.脳室外ドレナージを施行したものの,術中に意識レベルの急速な改善を認めた.術後CT では,水頭症の改善と陥頓血腫の消失を認めた.通常,脳室内血腫に伴う水頭症は発症時から速やかに進行するものが大半だが,本症例では遅発性に急性発症の水頭症を経験した.経過中に脳室内血腫が急速にwash out しており,ワルファリンによる凝固不全状態が,脆弱な血腫形成に関与し,遊離血腫による陥頓を来した可能性が示唆された.