2016 年 39 巻 5 号 p. 370-374
症例は16 歳男性.頭痛で発症した後頭葉の脳動静脈奇形(arteriovenous malformation: AVM)で,陽子線治療後も同名半盲を前兆とする片頭痛症状が持続した.予防薬開始後は頭痛が激減したが1 年後には再発し,急性期にトリプタンを併用した.しかし,トリプタン使用にもかかわらず頭痛は持続し,右後頭葉での局所血流増加を認めた.トリプタンによる脳血流への悪影響を考慮し薬剤を中止すると頭痛は速やかに消退した.非頭痛時にはnidus での血流低下は明白であり,頭痛発作と脳血流増加との関連性が示唆された.他方,片頭痛時のトリプタン使用においては,病的な血管構造を持つAVM 局所での血管収縮作用の誘導は困難と考えられ,正常脳からAVM 部への血流シフトを招く可能性が疑われた.AVM に伴う片頭痛時のトリプタン使用は,nidus 部への過還流をさらに助長させ,頭痛症状の悪化を招く可能性も示唆された.