2021 年 43 巻 3 号 p. 221-225
要旨:症例は44歳男性.言葉がうまく出てこないことを主訴に救急外来を受診した.頭部MRIでは左中大脳動脈領域に塞栓性脳梗塞所見を認めた.経胸壁心臓超音波検査で左心室心尖部に血栓所見を認めた.左心室収縮能は概ね正常であった.抗凝固療法開始後,血栓は縮小を認め,最終的に消失した.血液凝固線溶系異常を精査したところ,プロテインC抗原量43%,プロテインC活性39%と低下していた.遺伝子検索はされなかったが,年齢や稀な部位に血栓形成を認めたことから,先天性プロテインC欠損症と考えられた.先天性プロテインC欠損症は非常に稀ではあるが,心腔内血栓,塞栓性脳梗塞の原因となりうることを考慮する必要がある.