脳卒中
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症例報告
急性健忘症を呈した脳弓梗塞の1例
田口 智朗廣瀬 正和末長 敏彦
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2021 年 43 巻 5 号 p. 467-471

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抄録

要旨:さまざまな病因により,Papez回路の一部を構成する脳弓が障害される報告がみられるが,純粋な脳弓障害の報告は稀である.今回,急性健忘症を呈した脳弓梗塞の1例を経験したため報告する.症例は75歳右利きの女性.突然の記憶障害を主訴に当院を受診した.時間の見当識障害および近時記憶障害を認める他には特記所見は認めなかった.頭部MRI拡散強調画像で,両側性で左優位の脳弓柱梗塞がみられた.症状は,14日の経過で3単語の遅延再生が可能なまでに改善した.Papez回路が障害され,近時記憶障害が生じたと考えられた.脳弓前部である脳弓柱の栄養血管としては脳梁下動脈が知られており,本症例は同血管からの分枝が閉塞したことによる梗塞であると考えられた.急性健忘症を呈した場合,脳弓を含む辺縁系構造物の梗塞症状である可能性もあり,迅速な精査が望ましいと考えられる.

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© 2021 日本脳卒中学会
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