2022 年 44 巻 2 号 p. 198-204
症例は,89歳,男性.右中大脳動脈閉塞による急性期脳梗塞で,アルテプラーゼ静注療法および脳血栓回収療法を行い,再開通を得た.脳梗塞発症機序は,心原性塞栓症(心房細動併存),あるいはTrousseau症候群(未治療の肺腺癌疑い)が考えられた.経口抗凝固薬で再発予防治療を開始していたが,両側内頚動脈閉塞症で再発し,第8病日に死亡したため,病理解剖を行った.進行期原発性肺腺癌(stage IIIb)と診断したこと,来院時のD-dimerが高値を示していたこと,播種性血管内凝固症候群を呈していたことから,Trousseau症候群による脳梗塞と診断した.回収血栓,および両側内頚動脈内血栓の病理学的検討の結果,Trousseau症候群で発生する血栓の特徴は,血小板主体の白色血栓で,新鮮な血栓であると考えられ,心原性塞栓症との鑑別診断の一助となる可能性がある.