2023 年 45 巻 6 号 p. 505-509
症例は90歳女性.心房細動に対して,アピキサバンを内服していた.意識障害と右片麻痺のため搬送され,頭部MRIで左後大脳動脈閉塞と同領域に急性期脳梗塞を認めた.大動脈精査の造影CT検査で,右大動脈弓,異所性左鎖骨下動脈に伴うKommerell憩室を認め,憩室内に血栓が示唆される造影欠損を認めた.アピキサバン内服中だったため,Kommerell憩室内の血栓による脳梗塞の可能性が高いと判断した.Kommerell憩室は大動脈弓発生過程での先天性奇形であり,合併症の頻度が高い.また,右大動脈弓を合併することが多く,右大動脈弓の精査から偶然見つかることが多いが,本症例は90歳まで未指摘だった.Kommerell憩室の脳合併症は,破裂や解離によることは想定されるが,Kommerell憩室内血栓で脳梗塞を来した報告は調べた限りなく,稀な1例を経験したため報告する.