脳卒中
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45 巻, 6 号
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症例報告
  • 宮田 貴広, 稲桝 丈司, 伊藤 章子, 斎藤 克也, 真柳 圭太, 中務 正志, 市川 誉基, 吉井 雅美, 大島 壮生, 冨保 和宏
    2023 年 45 巻 6 号 p. 453-459
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/25
    [早期公開] 公開日: 2023/05/26
    ジャーナル オープンアクセス

    当院において,2010~2019年の10年間で運転中発症かつ目撃のある事故を起こした急性期(発症≤24h)脳梗塞9例中,2例で機械的血栓回収術(MT)が施行された.MTでは可及的時間短縮が必要だが,事故後症例では時間短縮の弊害となる行為が存在する.上記2例を後方視的に検討,時間短縮における課題を同定することを研究目的とした.事故発生~再開通までの時間経過は,①事故発生~病着,②病着~穿刺,③穿刺~再開通の3つに分類できる.①では,脊椎保護に要した時間の他,事故処理という社会的行為も早期発見・搬送の妨げとなった.②では,全身外傷除外目的で行った画像検査や頭部MRI施行に時間を要した.院内体制の整備により②における時間短縮は可能であり,ハイブリッド救急初療室導入等の代替手段も考慮される.今後も安全を担保しつつ,時間短縮を図るという二重の目標に向け,経験の蓄積が必要である.

  • 瀧野 透, 西野 和彦, 佐藤 太郎, 佐竹 大賢, 佐藤 裕之, 小泉 孝幸
    2023 年 45 巻 6 号 p. 460-465
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/25
    [早期公開] 公開日: 2023/05/31
    ジャーナル オープンアクセス

    Persistent primitive proatlantal artery (PPPA) type Iを伴う症候性頚部内頚動脈狭窄症の1例を報告する.症例は77歳,女性.全失語と重度右半身麻痺で来院した.拡散強調画像で左大脳に分水嶺梗塞と左頚部内頚動脈に高度狭窄を認め,狭窄部は内頚動脈から分岐するPPPAの近位部であった.病変部は粗大な不安定plaqueを有し,狭窄が進行していたため,頚動脈ステント留置術を行う方針とした.PPPA経由で後方循環にdebrisが飛散することが懸念されたため,意図的にPPPAをコイルで閉塞した後にCASを行った.原始血管吻合を伴う症例に対するCASでは,後方循環系への虚血リスクを考慮する必要があると考えられた.

  • 西原 琢人, 梶本 隆太, 大谷 直樹, 稲原 裕也, 大滝 遼, 小林 真人, 勝原 隆道, 吉野 篤緒
    2023 年 45 巻 6 号 p. 466-472
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/25
    [早期公開] 公開日: 2023/06/02
    ジャーナル オープンアクセス

    テント部硬膜動静脈瘻(TDAVF)は,脳実質内出血やくも膜下出血で発症して脳実質損傷を生じることが多く,急性硬膜下血腫(ASDH)の単独発症は非常に稀である.今回我々は,後頭蓋窩ASDHで発症したTDAVFに対して,発症早期に直達手術にて転帰良好であった症例を経験したので報告する.症例は29歳男性,突然の頭痛と嘔吐を生じたため,当院に救急搬送された.頭部CTで右後頭蓋窩にASDHを認めた.脳血管撮影では右テント切痕部にシャント部があり,静脈逆流および静脈瘤の形成を有するTDAVFの所見を認めた.血管内治療では,シャント部へのマイクロカテーテルの誘導が困難で,直達手術によりシャント部の完全閉塞が得られた.脳実質損傷を伴わない後頭蓋窩ASDH単独発症のTDAVF患者では,血腫除去および導出静脈におけるシャント部の離断を同時に施行でき,かつ根治性が高い直達手術の有用性が示唆された.

  • 松田 知大, 佐藤 浩一, 宮本 健志, 榎本 紀哉, 花岡 真実, 仁木 均, 松崎 和仁
    2023 年 45 巻 6 号 p. 473-478
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/25
    [早期公開] 公開日: 2023/06/08
    ジャーナル オープンアクセス

    二重起始後下小脳動脈(double origin of PICA: DOPICA)は稀な解剖学的変異であり,動脈瘤を合併しやすい.今回我々は,破裂PICA動脈瘤をコイル塞栓し,経過中にPICAごと閉塞したが,DOPICAの他方の起始部からの側副血流により虚血を免れた症例を経験したので報告する.症例は35歳男性でめまい,嘔気,頭痛あり,頭部CTにてSAHを認めた.DSAで右PICAにside wall type動脈瘤を認め,コイル塞栓術を行った.動脈瘤のみ塞栓し,親動脈は温存でき,術後合併症や症状なく経過した.術後7日後のMRIでは新規脳梗塞はなかったが,MRAで動脈瘤ごとPICA起始部の閉塞を認めた.DSAでは異なる箇所から起始するPICAが側副循環として働き,PICA遠位部の灌流が補われていた.DOPICAのPICA動脈瘤では,コイル塞栓術後に他方のPICAが側副循環として役割をもつと考えられる.

  • 羽田 栄信, 池田 宏之, 額田 遼太郎, 赤池 夏樹, 大薄 卓也, 上里 弥波, 紀之定 昌則, 黒﨑 義隆, 沈 正樹
    2023 年 45 巻 6 号 p. 479-485
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/25
    [早期公開] 公開日: 2023/06/13
    ジャーナル オープンアクセス

    患者は78歳女性で,左片麻痺を契機にかかりつけ医で脳梗塞と診断され,当院に搬送された.到着時NIHSSは15点,前医で撮像したMRAで右M1閉塞を認め,DWI-ASPECTSは8点であった.血栓回収療法で白色血栓を回収し,完全再開通を得たが,左片麻痺は改善しなかった.第2病日,意識障害の進行を認め,NIHSSは19点,頭部MRAで再度右M1閉塞を認め,DWI-ASPECTSは5点であった.2回目の血栓回収療法を行い,再度白色血栓を回収し,M1再開通を得た.術後の体幹部造影CTで進行性膵がんが見つかり,Dダイマー高値と血栓の性状を踏まえ,1回目のM1閉塞の発生機序はがん関連塞栓症と判断した.患者は第39病日に原疾患により死亡した.がん関連脳主幹動脈閉塞は,凝固亢進状態に伴い,血栓回収療法後の短期間に血管内皮損傷のある再開通部位が再閉塞する可能性があるため,慎重な経過観察が必要である.

  • 野原 聡平, 阿部 悟朗, 伊藤 理, 鈴木 聡
    2023 年 45 巻 6 号 p. 486-492
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/25
    [早期公開] 公開日: 2023/06/19
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は60歳男性.約2カ月前に右前大脳動脈(ACA)のA2閉塞による急性期脳梗塞で12日間入院していた.仕事中に軽度の右片麻痺,遂行機能障害が出現し,左MCA M1近位部閉塞による急性期脳梗塞で再入院した.高分解能MRIの血管壁イメージング(VWI)で左MCA M1近位部の閉塞部位に全周性の壁肥厚を認めたことから中枢神経系血管炎が疑われ,FilmArray髄膜炎・脳炎(ME)パネルで検査したところ,水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の核酸が検出された.先行する発疹はなかったがVZV血管症と考え,アシクロビル点滴とプレドニゾロン内服で治療し,症状は改善した.造影VWIは閉塞部位で壁肥厚と造影効果がみられた.同部位は治療後9週間後に壁肥厚と造影効果の減弱がみられ,治療後3カ月半後のMRAで再開通がみられた.本症例はMEパネルがVZV血管症のより早期の診断に役立ち,またVWIが診断と予後予測に有用であった.

  • 齋藤 孝光, 石川 敏仁, 海老原 研一, 遠藤 勝洋, 遠藤 雄司, 佐藤 直樹, 太田 守
    2023 年 45 巻 6 号 p. 493-498
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/25
    [早期公開] 公開日: 2023/06/19
    ジャーナル オープンアクセス

    前下小脳動脈末梢部に発生する動脈瘤は極めて稀であり,これまでclipping術やtrapping術,母血管閉塞術が施行されてきた.今回,meatal loopに発生した破裂前下小脳動脈瘤に対し,血管内治療を施行し,良好な結果を得られた症例を経験したので報告する.症例は51歳,男性.突然の頭痛で発症し,後頭蓋窩に厚いくも膜下出血と,動脈解離が疑われる右前下小脳動脈末梢部動脈瘤を認めた.母血管塞栓術を企図して血管内治療を行ったが,結果的に瘤内塞栓術を施行した.術後は聴力障害や顔面神経麻痺等の神経学的異常所見は認めなかった.経過観察目的の脳血管撮影では動脈瘤の再発は認めず,右前下小脳動脈の血流も温存されていた.前下小脳動脈末梢部動脈瘤に対する治療では,聴力温存や,新規梗塞巣の発症率を下げる点において瘤内塞栓術は有用であるが,再発の可能性を十分に考慮し,定期的な血管評価は必須である.

  • 藤井 照子, 久保田 叔宏, 林 俊彦, 渡辺 俊樹, 笠原 一郎, 栢森 高, 唐鎌 淳, 高田 義章
    2023 年 45 巻 6 号 p. 499-504
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/25
    [早期公開] 公開日: 2023/07/12
    ジャーナル オープンアクセス

    浸潤型副鼻腔アスペルギルス症に,脳膿瘍と短期間に増大と破裂を繰り返す真菌性動脈瘤を併発した高齢者の1例を報告する.症例は83歳女性.突然の意識障害にて当院に緊急搬送となり,頭部CTとMRIにて蝶形骨洞内の膿瘍が骨破壊を伴い頭蓋内に浸潤し,脳室への穿破を伴う脳膿瘍を形成する所見を認めた.入院後,意識状態の悪化を認め,SAHの所見と膿瘍近傍に内頚動脈瘤の出現を認めた.水頭症に対して脳室ドレナージ術を行い,髄液培養でアスペルギルスが同定されたため,真菌性の脳膿瘍による動脈瘤と判断し,ボリコナゾールの投与を開始した.いったん神経所見は改善したが,再度,SAHと,内頚動脈瘤の増大を認めた.抗真菌薬の加療を継続したが,心不全,腎不全の悪化あり,死亡に至った.剖検を行い,蝶形骨洞の膿瘍から脳実質内,内頚動脈瘤壁までアスペルギルス菌糸を認め,一連の疾患はアスペルギルス感染によるものと明示された.

  • 水戸 大樹, 松岡 幹晃, 清原 卓也, 由比 智裕, 熊井 康敬, 杉森 宏
    2023 年 45 巻 6 号 p. 505-509
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/25
    [早期公開] 公開日: 2023/07/12
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は90歳女性.心房細動に対して,アピキサバンを内服していた.意識障害と右片麻痺のため搬送され,頭部MRIで左後大脳動脈閉塞と同領域に急性期脳梗塞を認めた.大動脈精査の造影CT検査で,右大動脈弓,異所性左鎖骨下動脈に伴うKommerell憩室を認め,憩室内に血栓が示唆される造影欠損を認めた.アピキサバン内服中だったため,Kommerell憩室内の血栓による脳梗塞の可能性が高いと判断した.Kommerell憩室は大動脈弓発生過程での先天性奇形であり,合併症の頻度が高い.また,右大動脈弓を合併することが多く,右大動脈弓の精査から偶然見つかることが多いが,本症例は90歳まで未指摘だった.Kommerell憩室の脳合併症は,破裂や解離によることは想定されるが,Kommerell憩室内血栓で脳梗塞を来した報告は調べた限りなく,稀な1例を経験したため報告する.

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