2026 年 48 巻 2 号 p. 71-77
【背景および目的】脳出血急性期における静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE)に対する抗凝固療法はいまだ一定の見解がない.今回我々はVTEと診断した患者に対するDOAC投与の安全性と有用性を検討した.【方法】2022年10月から2024年9月に,1週間以上入院した脳出血患者連続191例を対象とした.重症度に応じて1週間に1回以上D-dimer値を測定した.VTE発症に関連する因子およびVTE患者に対するDOAC投与の安全性と有用性を統計学的に評価した.【結果】VTEの危険因子は入院中D-dimer最大値(p=0.04),入院時Glasgow Coma Scale(GCS)(p=0.03)であった.VTEは14例(7.3%)で認められ,全例とも無症候性であった.DOAC投与開始後平均6.5日でD-dimer値は正常化した.脳出血の増大や全身の出血性合併症は認めなかった.【結論】脳出血急性期におけるD-dimer値の測定を行うことで,VTEの早期診断が可能であった.概ね発症後7日程度で一度D-dimer値の測定が考慮される.DOACを用いた抗凝固療法は出血性合併症なくVTEの症候化を予防できる可能性がある.