抄録
要旨:コイル塞栓術は脳動脈瘤治療における確立された治療法のひとつであり,その注意すべき周術期合併症は脳梗塞や脳出血のみならず,さまざまものが知られている.今回,脳動脈瘤に対するコイル塞栓術後に脳動脈瘤周囲に一過性の浮腫を生じ,そのため様々な症状を呈したが,内科治療で浮腫および症状が速やかに改善した1 例を経験した.症例は86 歳で,徐々に増大する椎骨動脈瘤に対するコイル塞栓術を行った.術直後は経過良好で,術後約72 時間で自宅退院した.その3 日後より複視,めまい,構音障害などが出現,MRI 上,動脈瘤周囲に浮腫を認めた.動脈瘤再増大の所見は認めなかった.塞栓した動脈瘤周囲に起きた浮腫による脳幹への圧迫症状と考えられた.ステロイドを含めた内科治療を行い,約1 週間で速やかに症状は改善し,その後浮腫の消失を認めた.脳動脈瘤コイル塞栓術後の動脈瘤周囲浮腫は,術前予期することが困難で,考慮すべき合併症の1 つである.