論文ID: 10979
症例は67歳女性,後頸部痛後の意識障害,呼吸障害が出現し,発症から60分で当院搬送された.頭部CT, CT angiography後に意識状態は改善したが,高度右上下肢麻痺を認めた.頭蓋内出血,主血管閉塞は認めなかったが,急性期脳梗塞と診断しrt-PAを投与した.その後,再度呼吸状態が悪化し,四肢麻痺が出現したため挿管し,胸腹部CTを再検すると頸胸髄硬膜外血腫を認めた.rt-PA投与より7時間で第3頸椎から第2胸椎までの多椎間右半椎弓切除術および頸髄硬膜外血腫除去術を施行した.術後,自発呼吸出現,麻痺改善を認め,術後3カ月で右上肢巧緻運動障害が残存し,社会復帰した.幸いにも手術にて良好な経過を得たが,脊髄硬膜外血腫は時に脳卒中類似症状で発症し,脳梗塞と誤診し抗血栓療法を行った場合,重篤な転帰をたどる.疼痛発症,症状の動揺など通常の急性期脳梗塞と異なる経過では,早期の治療開始を急ぐより,正確な診断を優先すべきである.