論文ID: 11140
遠隔の腫瘍からの流出静脈が,硬膜動静脈瘻(DAVF)に流入している稀な症例を経験したので報告する.症例は77歳,女性.急速に増悪する両側結膜充血,複視を主訴に入院となった.脳血管撮影で,主に左外頚動脈系からshuntを有し,両側後頭蓋窩系および両側上眼静脈へ流出する左海綿静脈洞部のDAVFと診断した.またMRIで左蝶形骨部に髄膜腫を疑う腫瘍を認めるも,こちらは経過観察とした.DAVFに対し経静脈塞栓術を行ったが,術後15日目に左眼症状の増悪を来した.脳血管撮影で,shuntの残存に加え,前述の腫瘍からの流出静脈が拡張した左上眼静脈への流入を認めた.残存するshuntおよび腫瘍への栄養血管に対する塞栓を行い,症状は改善した.本症例の初回治療後の再発は,不十分な塞栓が主な原因と考えたが,再発という経過を通し,腫瘍からの流出静脈の影響を推測し,同様の解剖学的特徴を有する症例への治療上の注意を考察した.