論文ID: 11256
症例は72歳男性.左下垂手を呈し来院した.橈骨神経麻痺を疑ったがsynkinetic wrist extensionという手を握ると同側の手首が伸展する現象が保たれており,頭部MRIで右precentral knob(PK)の急性期脳梗塞を認めて入院した.ループスアンチコアグラント陽性で抗リン脂質抗体症候群と診断し,アスピリンを開始した.症状は急速に改善して第9病日に退院した.PK梗塞は対側の手首と指の進展運動が障害されて橈骨神経麻痺類似の症状を呈するが,前腕伸筋と前腕屈筋の同調収縮は保たれることから診断の一助となるsynkinetic wrist extensionが可能である.また,PK梗塞は塞栓性の病因が多いとされるが,抗リン脂質抗体症候群による動脈血栓症も成因として考慮する必要がある.