論文ID: 11332
無症候性脳梗塞を契機に診断され,短期間で致死的な経過を辿った血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura: TTP)の症例を報告する.症例はこれまでに明らかな既往歴のない82歳女性で3日前からの頸部の違和感で前医を受診し,散在性脳梗塞を指摘され独歩で当院を受診.明らかな神経脱落症状を認めないが頭部MRIにて塞栓性の急性期梗塞を認め入院加療とした.入院後血液検査にて血小板減少,急性腎不全,溶血性貧血を認め患者も不穏状態となり専門的加療が必要と判断し高次医療機関へ転院となった.その後ADAMTS13活性の低下を認めたためTTPの診断となり,可及的に血漿交換を施行されたが受診の翌日に死亡した.無症候性の脳梗塞については微小血栓による塞栓症によるものと推察された.TTPは非特異的な症状のみで発症し,急激な病状の進行を来し,治療介入の遅延により致命的な経過を辿る可能性もあり注意が必要である.