脳卒中
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脳出血による皮質下聾の1例
北原 孝雄早川 功神田 直田崎 義昭
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1979 年 1 巻 4 号 p. 360-364

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抄録
症例は46歳, 右利きの男性.昭和47年6月右半球, 昭和53年4月左半球の2回の脳血管発作後, 聾となった.失語などの皮質症状は認められなかった.CTにて, 左被殻から島にかけての限局したhigh density areaと, 右基底核部を中心に散在するlow density areaを認めた.純音聴力検査では, 13日目には右40dB, 左85dB以上 (1,000Hz) の聴力損失は, 25日目には右20dB, 左10dBにまで回復した.最高語音明瞭度は23日目で右66%, 左0%であったが, 40日目には右84%, 左40%にまで回復した.AERは40日目になり右刺激にて反応が出現したが, 左刺激での反応はみられなかった.本症例は臨床的にも, またCT所見からも皮質下での聴放線損傷に基づく聾と考えられた.皮質下病変に基づく聾の症例は現在までに3例の報告をみるのみであり, 本症例はいわゆる皮質聾の責任病巣を検討するうえで, 貴重な症例であると考え, 文献的考察を加えて報告する.
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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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