脳卒中
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比較的若年で心筋梗塞脳梗塞をきたした先天性アンチトロンビンIII欠乏症の1例
山口 修平小林 祥泰恒松 徳五郎
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1989 年 11 巻 2 号 p. 101-105

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抄録

著明な動脈硬化を伴い, 比較的若年で心筋梗塞及び多発性脳梗塞を発症した先天性アンチトロンビンIII (ATIII) 欠乏症と考えられる1例を経験した。症例は56歳男性.30歳頃心筋梗塞, 43歳頃脳梗塞に罹患.その後多発脳梗塞性痴呆となる.心電図では陳旧性前壁中隔梗塞を認め, 頭部CTでは両側基底核に多発性の低吸収域を認めた。脳血管写でも内頚動脈の狭窄や前大脳動脈の硬化性変化を認めた.血漿ATIII濃度は7mg/dl, 活性は40%と著明に低下していた.弟でもATIII濃度18mg/dl, 活性46%と低下を認めた.入院後抗血小板剤の投与で, ATIIIは軽度の増加を認めた.先天性ATIII欠乏症で動脈に多発性の血栓を生じる例は極めて稀であるが, 動脈硬化の進展にATmが関与していることが推察された.さらにATIII欠乏症に対する抗血小板剤の有効性が示唆された。

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