脳卒中
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11 巻, 2 号
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  • 山口 修平, 小林 祥泰, 恒松 徳五郎
    1989 年 11 巻 2 号 p. 101-105
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/07/23
    ジャーナル フリー
    著明な動脈硬化を伴い, 比較的若年で心筋梗塞及び多発性脳梗塞を発症した先天性アンチトロンビンIII (ATIII) 欠乏症と考えられる1例を経験した。症例は56歳男性.30歳頃心筋梗塞, 43歳頃脳梗塞に罹患.その後多発脳梗塞性痴呆となる.心電図では陳旧性前壁中隔梗塞を認め, 頭部CTでは両側基底核に多発性の低吸収域を認めた。脳血管写でも内頚動脈の狭窄や前大脳動脈の硬化性変化を認めた.血漿ATIII濃度は7mg/dl, 活性は40%と著明に低下していた.弟でもATIII濃度18mg/dl, 活性46%と低下を認めた.入院後抗血小板剤の投与で, ATIIIは軽度の増加を認めた.先天性ATIII欠乏症で動脈に多発性の血栓を生じる例は極めて稀であるが, 動脈硬化の進展にATmが関与していることが推察された.さらにATIII欠乏症に対する抗血小板剤の有効性が示唆された。
  • 日野 英忠, 古橋 紀久, 神田 直, 田崎 義昭
    1989 年 11 巻 2 号 p. 106-110
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/07/23
    ジャーナル フリー
    頭部X線CTにより診断した前脈絡叢動脈領域梗塞7症例について臨床的検討を行った.神経症状として片麻痺, 半身感覚鈍麻, 半盲の三主要徴候のほか, 全例に著明な自発性低下, 記銘力障害を急性期に認めた.これらの発現機序として, 視床障害の関与を推察した.また見当識障害, 失計算も多くみられ, さらに大脳皮質症状である半側視空間失認, 病態失認も認められた.CT所見は特徴的な内包後脚全域の低吸収域のみならず, 外側膝状体に及ぶ病変も多くみられたが, 視床, 側頭葉, 中脳などのその他の灌流域での異常は認められなかった.脳血管写上, 多くの症例では本血管の主幹部または分岐部内頚動脈での狭窄所見を認めた.脳梗塞発症の原因として脳動脈瘤クリッピング, 高血圧症があげられる.その他蛋白同化ステロイド薬使用後, 再生不良性貧血, 妊娠中の発症があり, さらに性交を契機とした例もみられた.
  • 前田 真治, 頼住 孝二, 横山 巖
    1989 年 11 巻 2 号 p. 111-118
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/07/23
    ジャーナル フリー
    脳卒中リハビリテーションにおいて, 屋外実用歩行能力を獲得することを予測する目的で, 1016例の入院脳卒中患者を対象として, 多変量解析の手法等を用いて分析検討した.
    その結果, 屋外歩行可能率は, 男性66%, 女性57%であり, 年齢でも, 49歳以下8割, 50歳代7割, 60歳代6割, 70歳以上4割と差がみられた.さらに, 早期に坐位・立位に至った例, 深部知覚障害のない例が屋外歩行可能性が高か.た.BrunnstromstageではIII以上が屋外歩行の必要条件と考えられた.
    失語症は歩行に直接関与せず, 半側空間失認は中等度の麻痺で関与していた.また, CT所見は錐体路障害に一致して関与していた.
    因子・重回帰分析を用いた分析では, 運動障害としての到達下肢Brunnstrom stage, 神経の可塑性など種々の総括的改善要因に関与している年齢, 残存能力の指標とした健側筋力の3項目を用いた重相関係数は0.60となり, 判別分析でも約8割の判別率が得られた.
  • 岡田 靖, 山口 武典, 田代 幹雄, 高野 健太郎, 峰松 一夫
    1989 年 11 巻 2 号 p. 119-124
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/07/23
    ジャーナル フリー
    血栓性脳梗塞18例 (平均年齢68.3歳, 皮質枝系6例, 穿通枝系12例) に急性期 (1~3病日), 亜急性期 (8~14病日), 慢性期 (28病日以降) の3期に全血粘度, ヘマトクリット, 血漿粘度, 間接的な赤血球変形能の指標 (RD-Index) を測定し, その経時的変動の意義について検討した.皮質枝群では, 急性期, 亜急性期に全血粘度の上昇がみられ, とくに急性期はヘマトクリット, 血漿粘度, 赤血球変形能の指標であるRD-indexのいずれもが全血粘度上昇に関与していた.穿通枝群では, 全血粘度の上昇はなく, 急性期のRD-Indexは慢性期に比し, 有意に高値 (赤血球変形能の低下) であった (P<0.01).以上のことから, 同じ脳血栓でも皮質枝群と穿通枝群とでは, 急性期の病態に関与する血液レオロジー的因子に差異があり, 治療上, 前者には血液希釈療法が, 後者には微小循環改善薬が, より適していると考えられる.
  • 畑 隆志, 東 邦彦, 北村 昭, 神田 直, 田崎 義昭
    1989 年 11 巻 2 号 p. 125-132
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    成猫12匹を用いて, 水素クリアランス法ならびに交差熱電対式組織血流計により局所脳血流量を測定し, Ca拮抗剤 (塩酸Nifedipine) の脳血流化学的調節機序に及ぼす影響を検討した.Nifedipineの直腸内投与 (1mg/kg) により局所脳血流量は皮質, 深部白質ともに有意に増加した (51.7±13.8~61.2±16.9, 20.7±9.4~44.6±23.3).しかし5%CO2吸入, 10%02吸入による脳血流の増加はNifedipine投与後は明らかに減少して, 本剤の投与により脳血管反応性が障害される可能性のあることが示された。Paco2の増加1mmHgに対する脳血流の増加率は投与前には皮質1.35%, 深部9.18%から投与後0.73%, 2.25%とそれぞれ低下した。Hypoxia (Pao2 : 32.3±5.7mmHg) 時の増加率も皮質35.5%, 深部87.6%から投与後には18。7%, 28.8%にそれぞれ低下した.このような血管反応性の低下の機序とその臨床上の意味について考察を加えた.
  • 治療上の問題点について
    入倉 克己, 宮坂 佳男, 大高 弘稔, 矢田 賢三, 広瀬 隆一
    1989 年 11 巻 2 号 p. 133-139
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/07/23
    ジャーナル フリー
    延髄外側症候群を呈した解離性椎骨動脈瘤例を報告し, 臨床像, 診断, 治療法について文献的考察を行い, 特に治療法に関する問題点と我々の考えを述べた.症例は48歳, 女性, 後頚部痛で発症.約9日間で完成した臨床像は延髄外側症候群であった.脳血管写にて, 従来指摘されている所見を呈し, 椎骨動脈の解離性動脈瘤と診断した.文献例では本症候群を呈する本疾患は極めて稀である.本疾患の外科的治療は椎骨動脈のproximal ligationが一般的である.しかし本症例ではこの方法により, 逆行性血流が動脈瘤の緊満膨隆をもたらし, 術中破裂の危険性が出現したため, 椎骨動脈のtrappingを施行した.術後症状の改善を見ている.従来のproximal ligationの報告例では血栓化の未確認例が半数以上を占め, 再出血の報告もある.血行動態によっては, trapPingが理想的であり, proximal ligationの症例で成績良好と断定するためには長期間の経過観察を要する.
  • 福田 忠治
    1989 年 11 巻 2 号 p. 140-148
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    破裂脳動脈瘤によるクモ膜下出血 (以下SAH) 63例の発症後72時間以内の急性期脳循環を133Xe bolus injectionにより測定した.半球平均灰白質血流量 (MFG) はSAH急性期に一般に低下した。63例をMFG値により正常・増大群 (A群17例;MFG>70 (ml/100g/min)].軽度低下群[B群30例;70≧MFG>50].高度低下群 [C群16例;50≧MFG] の3群に分類し各群のsymptomaticvasospasm (SVS) の発生頻度及び重症度を比較した.A群では17.7%, B群では66。7%のSVS発生率であったが重篤な神経症状を残すか死亡するsevereSVS例は無かった.一方C群では全例にSVSが発生し, 81.2%がsevereSVSに陥った。入院時のHunt &Kosnik's Grading (H&K-G) やCT上のSAH重症度が同じ症例群においても, 急性期脳循環障害が著しい例では, severeSVSが生じ, 転帰を悪くする傾向が見られた。SAH急性期の脳循環障害はSVSの増悪因子の一つになるものと思われた.
  • とくにBinswanger型梗塞の出現について
    岩本 俊彦, 阿部 喜江, 高木 泰, 柚木 和太, 勝沼 英宇
    1989 年 11 巻 2 号 p. 149-154
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/07/23
    ジャーナル フリー
    MCA病変による梗塞巣の広がりとその出現頻度を知る目的で, 223例のMCA閉塞あるいは狭窄例を対象として血管撮影所見を4群に分類し, また臨床的に診断された塞栓症と非塞栓症の閉塞機転の相違からCT所見を検討した.すなわち血管撮影所見よりM1, M2閉塞をそれぞれI, II 群, M1, M2狭窄をIII, IV群とすると, 各群は84例, 88例, 31例, 20例であった。またCTにて低吸収域を示したものは199例あり, その所見を梗塞巣の分布によってS+D, S, B, D, WB, D+WB, WM, H typeに分類すると, それぞれ60例, 45例, 18例, 10例, 15例, 47例, 1例, 3例であった.梗塞巣の分布ではS+D type, D+WB typeが多く, その過半数はI群にみられ, 塞栓症を加えるとM1閉塞によるものが各々85%, 77%となった.このうちI群のD+WB typeは非塞栓症でみられ, 一方I群以外の多くはM2の塞栓性閉塞であった.S typeの80%はM2病変 (II・IV群) であり, II~IV群にみられたB typeは, すべて非塞栓症であった.またD typeの60%はI群に, WB typeはI~III群にみられ, 塞栓症は概して少なかった.WM type, H typeは他の血管病変の合併が示された。以上より閉塞機転の相違により非塞栓性M1閉塞ではD+WB type, D type, WB typeが, M2閉塞ではStypeが多かった.しかしMCA髄質枝領域の梗塞であるB typeも少ないながらII~IV群にみられ, 特にM2狭窄で高頻度であった.
  • 内山 伸治, 小島 久典
    1989 年 11 巻 2 号 p. 155-160
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/07/23
    ジャーナル フリー
    72歳男性脳梗塞例において, 右側のfrontal artery sign (FAS) と対側のexternal carotid artery sign (ECS) を観察し, 右frontal artery (FA) は左浅側頭動脈 (STA) により潅流されていた.血管写により右総頚動脈 (CCA) の完全閉塞と, 左STAから右FAを介する右眼動脈への交叉性の側副血行を確認した.右外頚動脈の再開通の後, ECSの出現側が逆転しFAは両側性に潅流された.FASとECSはexternal carotid-internal carotid collateralと関連し, いずれも同側内頚動脈閉塞の診断に有用とされるが, 対側のECSを伴うFASは “crossed external carotid-internal carotid collatera1” を反映した臨床所見であり, bedsideにおいてCCA閉塞を示唆する重要な徴候となり得る事を指摘した.
  • 福井 俊哉
    1989 年 11 巻 2 号 p. 161-168
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/07/23
    ジャーナル フリー
    IVDSAにより脳血管障害患者の血管病変部位を明確にし, 危険因子, 血小板凝集能, 治療, 予防およびIVDSAの診断率, 合併症について論じた.IVDSA1,031件中, 検査所見の整っている234例, 平均61.4歳を対象にした.
    IVDSAは, スクリーニング的に施行でき, 無侵襲で合併症が少ない (合併率7.5%).主幹動脈や太い皮質枝に関して従来の血管造影法と同等な診断能を有するが, 細い皮質枝や穿通枝の診断能は低い.
    内頚動脈閉塞群は高血圧合併率が低く, 突然発症が多い.血栓以外に塞栓, 血栓内出血, 解離性動脈瘤の可能性が高い.主幹動脈病変で高血圧, 喫煙, 糖尿病, 虚血性心疾患等が, また, 穿通枝, 小動脈病変ではさらに高度な高血圧, ヘマトクリット高値, 血小板凝集能充進などが危険因子であった.
    動脈延長が著明な群ではADP惹起性血小板凝集能が抗血小板治療に抵抗性であった.再発予防のために, このような例に対しては強力な血小板凝集抑制治療が望まれる.
  • 特にCTとの比較について
    松村 憲一, 岡田 達也, 中洲 庸子, 半田 譲二, 藤堂 義郎
    1989 年 11 巻 2 号 p. 169-178
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/07/23
    ジャーナル フリー
    急性期クモ膜下出血のMRIはCTに比べ診断価値が低いと言われ, またMRIは重症患者には実施し難い面もあり, 臨床例の報告は少ない.我々は脳動脈瘤破裂による急性期クモ膜下出血11例に対しMRIを施行したので, 亜急性期2例, 慢性期1例を含めてその所見を特にCTと比較して報告する.機種はPicker社製0.5T, 超電導パルス連鎖はマルチスピンエコー法を使用した.D急性期クモ膜下出血全例に, ρ密度強調, T2強調画像で側脳室内のfluid畷uidlevelを認めた.また, 13例でT2強調画像でクモ膜下腔がより高信号を呈し, 出血の進展をCTより細部に亘り描出し得た.2) MRIではCTに比し早期にperiventricular edemaを認めた.3) 既存の小梗塞はCTに比しより明確に認められたが, acute vasospasmを示唆する所見は得られなかった。4) MRI上脳動脈瘤様のsignalvoidを呈しながら脳血管撮影でそれに相当する病変を認めない例があった.
  • 特に血糖コントロールの及ぼす影響について
    高木 誠
    1989 年 11 巻 2 号 p. 179-186
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/07/23
    ジャーナル フリー
    糖尿病において空腹時血糖値 (FBS) を指標とする血糖コントロールが, 脳血管障害の発症に及ぼす影響について検討した.対象は発症1年以内に当院の糖尿病外来を受診し, その後少なくとも5年間連続して通院した432名の糖尿病患者である.対象を平均13.2年間観察し, 期間中に36名の脳血管障害 (CVD) の発症を認めた。受診後5年間のFBSの平均値はCVD群132.5mg/dl, 非CVD群117.1mg/dlとCVD群で有意に高かった.また血糖コントロールをFBSの値により, 良・可・不良の3群に分けると, コントロールの不良な群ほど脳血管障害の発症率は高かった.FBS以外のリスクファクターも含むproportional hazards modelでもFBSは脳血管障害の発症に対し, もっとも影響のある因子として選択された.以上により, 血糖コントロールは糖尿病において脳血管障害発症の重要なリスクファクターとなることが示唆された.
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