抄録
虚血性眼病変 (venous stasis retinopathy, ischemic oculopathy) を有する6症例におけるCT, 脳血管撮影所見について検討した.症例は全員男性で, 平均年齢は56歳であった.眼症候としては, 1例はamaurosis fugaxのみで, 他の5例には視力低下を認めた.このうち3例はamaurosis fugaxも合併していた.CTでは, 2例に梗塞巣が認められず, 梗塞巣を有する4例も, 内頸動脈閉塞があるにもかかわらず, 病巣は小さかった.脳血管撮影所見としては, 全例に虚血性眼病変と同側の頭蓋外内頸動脈に閉塞が存在し, 5例に眼動脈を主体とした側副血行路が認められた.この豊富な側副血行路により, 網膜血流の盗血現象を起こし, これが虚血性眼病変の誘因となったものと考えられた.4例が血管新生緑内障へと進展し, 視力に関する転帰は不良であった.従って, 閉塞性内頸動脈病変があり, 眼動脈を逆行する豊富な側副血行が認められる症例では, 定期的な眼科的検査が必要である.