脳卒中
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初回血管撮影にて出血源を同定し得なかったくも膜下出血例の検討
血管撮影の再施行は必要か
下田 雅美小田 真理佐藤 修津金 隆一
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1991 年 13 巻 3 号 p. 192-197

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抄録

血管撮影 (AG) を施行されたくも膜下出血 (SAH) 患者544例中, 初回AGにて動脈瘤が同定された416例 (初回同定群), 2回目以降で同定された23例 (潜伏群), 同定されなかった41例 (不明群) につき種々の因子を比較検討した.不明群では入院時CT上Fisher分類1~2が50%, 脳室内出血 (IVH) は30%, 水頭症は20%に認めた.また, 症候性血管攣縮 (SV), 再出血, 正常圧水頭症 (NPH) の合併頻度はそれぞれ15%, 10%, 10%で他群に比し予後良好であった.一方, 潜伏群の出血源は前交通動脈瘤, 中大脳動脈瘤の両者で55%を占め, 20例 (87%) が5mm以下の小動脈瘤であった.仮に入院時CTでのFisher分類3~4, IVH, 水頭症, ICH, 経過中のSV, 再出血, NPHのいずれかを認めた時にのみAG再検を施行するとしたsimmulation testを行った場合, 潜伏群では偽陰性率17%で動脈瘤が見逃された.従ってSAH患者において初回のAGで出血源を同定し得なかった場合, 例え如何なる臨床像を呈してもAGの再施行は必要欠くべからざるものと考えられた.

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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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