脳卒中
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13 巻, 3 号
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  • 重症例の保存的治療の限界と問題点
    古賀 信憲, 畑下 鎮男, 植木 泰行, 保坂 泰昭, 高木 偉
    1991 年 13 巻 3 号 p. 151-158
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    約9年間に当科へ入院した原発性橋出血86例の, 急性期臨床症状やCT所見と予後との関係や問題点につき, とくに重症例を中心に検討した.症例は男性69例, 女性17例で, 平均年齢53.1歳であった.臨床症状では, 高度意識障害, 瞳孔眼球固定, 四肢麻痺および除脳硬直肢位が, またCT所見では, 血腫の最大横径26mm以上, 中脳広範囲以上の拡がり, および第四脳室穿破が予後不良の徴候であった.三次救急ホットラインシステム導入前は, 死亡率60.5%と高率であったが, 導入以後は救命された症例が多く, 死亡率も29.1%と減少した.重度障害, 植物状態例が多く, 2年後の長期予後では全死亡率70.4%に達し, 重症橋出血の保存的療法の限界ともいえるが, 集中治療, 全身管理を徹底することにより, 生命および機能予後はさらに改善すると思われる.また, 高血圧を中心とした脳卒中危険因子を減らすなど, 予防医学を徹底し, 発症を最少限におさえることも重要である.
  • 寺井 敏, 松原 俊幸
    1991 年 13 巻 3 号 p. 159-164
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    激しい頭痛で発症し, 傾眠状態, 下肢に強い右側不全片麻痺及び尿失禁を呈した51歳男性例を報告した.本例ではCT上左前大脳動脈領域に低吸収域がみられ, 脳血管撮影により左前大脳動脈に解離性動脈瘤を認めた.解離性脳動脈瘤が前大脳動脈に限局した例は珍しく, また, 頭痛を前駆症状として発症した脳梗塞例では, 本疾患を原疾患の一つとして考慮すべきと思われた.
  • 宇野 昌明, 松本 圭蔵
    1991 年 13 巻 3 号 p. 165-174
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    原発性小脳出血246例を重症度分類し, 各治療法別にこれらの臨床所見, CT所見, 転帰を検討し, 各治療法の適応と限界について検討した.意識が清明か傾眠で, 血腫径が3cm未満の症例 (benign type) は保存療法でgoodが84.7%を占め, 保存療法で充分対応できた.意識が清明か傾眠で, 血腫径が3cm未満で水頭症を伴っている症例 (moderate type) は脳室ドレナージのみでgoodが90.9%と良好であった.しかしmoderate typeでも血腫径が3cm以上の症例は血腫除去が必要であった.意識が昏迷から半昏睡の症例 (severe type) は血腫除去をしない限り転帰は不良であった.さらに, 意識が発症直後から昏睡に陥る症例 (fulminant type) はいかなる治療にも抵抗し転帰不良であった.また意識障害以外で予後を不良にする因子として, (1) 血腫量が30ml以上の症例, (2) 血腫が半球から虫部に伸展する例, 虫部を中心に出血する例, (3) 70歳以上の症例, (4) 既往に脳卒中のある症例があげられた.
  • 山中 龍也, 寺林 征, 新井田 広仁, 三輪 淳夫, 杉山 義昭
    1991 年 13 巻 3 号 p. 175-179
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    中大脳動脈閉塞症を呈した弾力線維性仮性黄色腫 (PXE) の1例を報告した.症例は52歳の女性で構音障害, 左片麻痺にて発症.頭部CT検査では右被殻部に低吸収域を認め, 脳血管写では右中大脳動脈閉塞症を認めた.眼底にはangioid streaksを認め, 皮膚生検よりPXEと診断された.中大脳動脈閉塞症はPXEによるものと考えられた.PXEの中枢神経症状合併例を主として本邦の報告例を中心に検討した.
  • 木谷 光博, 小林 祥泰, 山口 修平, 岡田 和悟, 小出 博巳
    1991 年 13 巻 3 号 p. 180-186
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    慢性期脳血管障害例14例 (穿通枝領域梗塞11例, 内頚動脈領域TIA3例) について1~3年間の経時的な頭部CTスキャンおよび133Xe吸入法による脳血流量の検討を行った.脳萎縮の評価はすでに我々が報告したBrain atrophy indexによった.その結果脳血流には有意の変化が認められないにも関わらず, 有意の脳萎縮の進行が認められた.慢性期脳血管障害においては脳血流の減少に先行し脳萎縮が進行する可能性が示唆された.
  • 中尾 直之, 久保 謙二, 森脇 宏
    1991 年 13 巻 3 号 p. 187-191
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    Pure sensory strokeを呈した延髄のlacunar infarctをMRIにて描出しえた1例を報告する.症例は58歳男性で, 右半身のしびれ感を主訴にて来院した.神経学的検査では顔面を除く右半身の温痛覚の低下を認めた.その他の神経脱落症状は認めなかった.CTスキャンでは明らかな異常を描出しえなかったが, MRIにて延髄の左辺縁すなわち左外側脊髄視床路にほぼ一致する部位にlacunar infarctを確認した.
  • 血管撮影の再施行は必要か
    下田 雅美, 小田 真理, 佐藤 修, 津金 隆一
    1991 年 13 巻 3 号 p. 192-197
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    血管撮影 (AG) を施行されたくも膜下出血 (SAH) 患者544例中, 初回AGにて動脈瘤が同定された416例 (初回同定群), 2回目以降で同定された23例 (潜伏群), 同定されなかった41例 (不明群) につき種々の因子を比較検討した.不明群では入院時CT上Fisher分類1~2が50%, 脳室内出血 (IVH) は30%, 水頭症は20%に認めた.また, 症候性血管攣縮 (SV), 再出血, 正常圧水頭症 (NPH) の合併頻度はそれぞれ15%, 10%, 10%で他群に比し予後良好であった.一方, 潜伏群の出血源は前交通動脈瘤, 中大脳動脈瘤の両者で55%を占め, 20例 (87%) が5mm以下の小動脈瘤であった.仮に入院時CTでのFisher分類3~4, IVH, 水頭症, ICH, 経過中のSV, 再出血, NPHのいずれかを認めた時にのみAG再検を施行するとしたsimmulation testを行った場合, 潜伏群では偽陰性率17%で動脈瘤が見逃された.従ってSAH患者において初回のAGで出血源を同定し得なかった場合, 例え如何なる臨床像を呈してもAGの再施行は必要欠くべからざるものと考えられた.
  • 山下 一也, 小林 祥泰, 岡田 和悟, 小出 博己, 恒松 徳五郎
    1991 年 13 巻 3 号 p. 198-203
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    長期喫煙の脳血流の経年変化に及ぼす影響について検討した.対象は地域健診対象者の正常男性26名で, 喫煙群13名 (平均年齢68.3歳), 非喫煙群13名 (平均年齢69.9歳) である.各群において, 133Xe吸入法で測定した脳血流量と呼吸機能PeCO2, 血圧, ヘマトクリット, 血清脂質などを比較検討した.脳血流量は, 喫煙群では60.1ml/100g/minから6年間で51.6ml/100g/minと有意の減少を示した (p<0.05).非喫煙群では62.5ml/100g/minから59.4ml/100g/minへと減少したが, 有意ではなかった.6年目の比較では, 喫煙群の方が非喫煙群に比して, 減少の傾向にあった (0.05<p<0.1).高血圧の既往歴は両群間に有意差を認めなかったが, 6年後の平均血圧は喫煙群では非喫煙群よりも有意に高かった.PeCO2, 呼吸機能, ヘマトクリット, 血清脂質に関しては, 両群間に有意差を認めなかった.長期の喫煙は, 脳血流減少の促進因子の一つになりうることが示唆された.
  • 糖尿病の影響
    棚橋 紀夫, 後藤 文男, 冨田 稔, 松岡 慈子, 武田 英孝
    1991 年 13 巻 3 号 p. 204-208
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    我々の開発した全血赤血球aggregometer (Am J physiol 1986 : 251 : H1205-H1210) を用いて糖尿病が慢性期脳梗塞患者の赤血球aggregability (RBC-A) に如何なる影響を及ぼしているかを検討した.対象は糖尿病を有さない慢性期脳梗塞患者70例 (A群 : 平均年齢 (59±9歳)) と糖尿病を有する慢性期脳梗塞患者24例 (B群 : 61±10歳) である.RBC-AはA群で0.147±0.026/s, B群で0.159±0.023/sであった.両群のRBC-Aは, 明らかな疾患を有さない健常者群 (59±9歳) のRBC-A (0.122±0.027/s) に比較し有意に (P<0.01, P<0.01) 亢進していた.さらにB群のRBC-Aは, A群のRBC-Aに比し有意に (P<0.05) 亢進していた.RBC-Aと同時に測定した血液諸因子 (血算, 血清蛋白, fibrinogen) は, B群でfibrinogen値がA群より高い傾向を示した.以上より, 糖尿病を合併した脳梗塞患者は合併しない脳梗塞患者よりもヘモレオロジー異常が顕著であることが示された.
  • 高里 良男, 成相 直, 長島 悟郎
    1991 年 13 巻 3 号 p. 209-213
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    高齢初産 (36歳) のため, 帝王切開にて分娩し, その3日後に失見当識・発語障害にて発症した産褥期深部脳静脈血栓症の1例を報告する.単純X線CTでは深部脳静脈系の高吸収域と両側視床・基底核領域の低吸収域, 造影X線CTではGalen大静脈部の陰影欠損を認めた.脳血管撮影では内大脳静脈・Galen大静脈・直静脈洞の閉塞所見を得た.血液検査所見で血小板数の増加, 血小板凝集能亢進, 活性化部分トロンボプラスチン時間 (APTT) の短縮を認め静脈血栓形成の一因と推定された.神経学的には不全片麻痺と視床障害に特徴的な精神症状を主症状としたが, 保存的治療にて全く脱落症状を残さず回復し, 3年後には問題なく第二子を出産した.成人脳静脈・静脈洞血栓症の中で深部静脈系単独の閉塞は稀であり, 予後不良とされているが, 表在性脳静脈・静脈洞閉塞同様に急性期を乗り切ると予後良好と考えられた.
  • 脳循環動態面よりの検討
    金子 尚二, 澤田 徹, 栗山 良紘, 成冨 博章, 唐沢 淳
    1991 年 13 巻 3 号 p. 214-220
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    高血圧重症度の同等な慢性期脳主幹動脈非閉塞例 (以下 : A群) と中大脳動脈閉塞例 (以下 : B群) における脳循環動態の特徴を知ること, 更には, B群において, 浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術前後の脳循環動態に及ぼす影響を知ることを目的として今回の検討を行った.対象はA群37例およびB群17例である.降圧は頭部挙上およびArfonad®微量注入により行い, 降圧に伴う脳血流変化率は脳動静脈血酸素含量較差法により算出した.脳循環自動調節能 (以下 : 調節能) はA群の33例 (89%) にみられ, B群では9例 (53%) に存在していた.更に, このB群9例における降圧許容範囲はA群に比し狭小化していた.B群の6例中5例では吻合術前に調節能は破綻していたが, 術後平均2ヵ月では全例に調節域が認められた.従って, 中大脳動脈閉塞群でみられた調節能の破綻は, 血管閉塞の結果, 体血圧と脳末梢灌流圧との較差を生じ, 脳循環自動調節能血圧下限値が更に右方へ偏位したための見かけ上の変化と考えられた.
  • 亀井 徹正, 福山 次郎, 相沢 信行, 内山 富士雄
    1991 年 13 巻 3 号 p. 221-223
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    超高速CTスキャンを用いて, 脳塞栓症のハイ・リスクとされる心疾患における心内血栓の診断を試みた.対象は非弁膜性心房細動33例, リウマチ性心疾患19例, 心筋梗塞5例, 心筋症6例, 同調律不全3例の合計66例である.造影剤を用いて心臓をスライス幅6mm, スキャン時間100msecで撮影した.動きのアーチファクトがなく, 心腔内は極めて明瞭に造影された.陰影欠損を血栓と判定し, 66例中31例に左房内血栓陽性であった.非弁膜性心房細動では55%に, リウマチ性心疾患では53%に左房内血栓が認められた.脳塞栓症のリスクとされる心疾患における心内血栓の診断は治療法選択のうえで重要であり, 本法はその為に有用な方法と考えられる.
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