抄録
心原性脳塞栓症 (E) と脳血栓症 (T) の凝固線溶動態の相違を検討する目的で, E群38例, T群63例と年齢を対応させた患者対照 (C) 群23例において急性期 (第7病日以内), 亜急性期 (第14~28病日), 慢性期 (第29病日以後) の各期毎にfibrinopeptide A (FPA), thrombinantithrombin III complex (TAT), antithrombin III (ATIII), protein C活性値および抗原量 (PC), fibrinopeptide Bβ15-42 (FPBβ15-42), D-dimer, α2 plasmin inhibitor-plasmin complex (PIC) の比較を行った.急性期にはE群ではT群よりもTAT, D-dimerが有意に高値, PCが有意に低値であり, 亜急性期にはFPA, FPBβ15-42が有意に高値であった.D-dimerは慢性期にもE群ではC群よりも有意に高値であった.E群ではT群よりも凝固線溶系が高度に活性化されており, E群における心内血栓形成を主に反映し, 今回測定した分子マーカーの中では特にTATとD-dimerが病態把握に有用であると考えられた.