脳卒中
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13 巻, 5 号
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  • 併存する虚血性病変について
    山口 慎也, 土谷 隆, 山口 武典
    1991 年 13 巻 5 号 p. 327-332
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    脳出血64例 (年齢59.6±10.2歳, 男39例, 女25例) を対象に, 高磁場MRIにて検出される点状虚血性病変の合併頻度およびその分布を検討した.T2強調画像で高信号域, T1強調像で低ないし等信号域を呈するものを “虚血性病変” (直径1.5cm未満) と定義した.結果の要点は次の通りである. (1) 虚血性病変は64例中48例 (75%) と高率に合併した. (2) 出血部位別の合併率は視床出血が100%, 被殼出血が78%, 皮質下出血が33%と出血部位による差が認められた. (3) 被殼出血と視床出血では虚血性病変の分布に差があった. (4) 虚血性病変に対応する臨床症候を呈したものは10%にとどまった. (5) 虚血性病変数と脳卒中危険因子, 年齢, 性についての多変量解析では, 高血圧との有意の相関が認められた.
    以上より, 脳出血, とくに視床出血では高血圧を基盤とした潜在性の “虚血性病変” が高率に合併し, その存在は降圧療法における至適血圧の設定の困難さを示している.
  • 吉永 まゆみ, 佐渡島 省三, 井林 雪郎, 石束 隆男, 藤島 正敏
    1991 年 13 巻 5 号 p. 333-340
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    高血圧自然発症ラットを用い, カルシウム拮抗薬 (ニルバジピン) の脳虚血時の脳代謝に及ぼす効果を検討した.
    1時間前にニルバジピンを経口投与し, 両側総頚動脈結紮による脳虚血作製後1時間あるいは3時間で脳を急速凍結し, 脳代謝産物を測定した.脳虚血1時間後のテント上大脳組織のATPは, 対照群の0.61±0.07mmol/kgに比べ, ニルバジピン0.5mg/kg投与群では1.09±0.16mmol/kgと有意に高く, ピルビン酸も対照群の0.12±0.02mmol/kgに比べ, 治療群では0.21±0.02mmol/kgと有意に高値であった.但し, 乳酸値には差はみられなかった.また, 脳虚血3時間後でも, ATPおよびピルビン酸値は治療群で高い値を示した.さらに脳虚血作製直後にニルバジピン0.5mg/kgを投与した群でも, 1時間後のATPは1.40±0.14mmol/kg, ピルビン酸は0.27±0.04mmol/kgと対照群に比し有意に高かった.一方, 脳血流の変化はニルバジピン0.1~0.5mg/kgの投与で, 脳虚血前後で対照群との間に差はみられなかった.ニルバジピンは脳血流改善以外の作用により, 脳虚血時の脳代謝障害を抑制すると思われる.
  • 棚橋 紀夫, 後藤 文男, 冨田 稔, 太田 晃一, 奈良 昌治
    1991 年 13 巻 5 号 p. 341-345
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    我々の開発した全血赤血球aggregometer (Am J Physiol 1986 : 251 : H1205-H1210) を用いて慢性期脳梗塞患者の赤血球aggregability (RBC-A) に対する Prostacyclin analogue (TRK-100)の影響を検討した.対象は発症後1カ月以上経過した慢性期脳梗塞患者10例 (男性8例, 女性2例, 平均年齢60±6歳 (mean±SD)) である.被検者にTRK-100 20μg/錠を1日3回毎食後 (1日量として60μg) に8週間連続投与した.RBC-AはTRK-100投与前, 投与4週間後, 投与8週間後に測定した.TRK-100投与前, 投与4週間後, 投与8週間後のRBC-Aは, それぞれ0.160±0.017/s, 0.151±0.018/s, 0.147±0.014/sであり健常者群 (38例, 59±9歳) のRBC-A (0.123±0.021/s) に比較するといずれも有意 (p<0.05) に亢進していた.また投与8週後のRBC-Aは投与前のRBC-Aに比較し有意 (p<0.05) に減少していた.上記の結果よりProstacyclin analogue (TRK-100) の慢性期脳梗塞患者に対する赤血球aggregability抑制効果が明らかになった.
  • 佐渡島 省三, 井林 雪郎, 大島 光子, 森 盛, 藤島 正敏
    1991 年 13 巻 5 号 p. 346-351
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    高血圧自然発症ラットを用い, 1時間脳虚血 (両側総頚動脈閉塞), 血行再開3時間後の脳循環代謝におよぼすカルシウム拮抗薬NC-1100の効果を検討した.脳虚血作製直後より, NC-1100 0.03, 0.1mg/kg/分あるいは生食水 (対照群) を持続投与した.大脳皮質血流量 (水素電極法) は, 脳虚血中各群とも10%以下に低下した。血行再開後脳血流量はNC-1100群では脳虚血前値の83~90%まで回復したが, 対照群では65%にとどまった.大脳組織の乳酸値は対照群, NC-1100 0.03, 0.1mg/kg/分でそれぞれ2.63±0.22, 2.43±026, 1.97±0.19 (p<0.01vs対照群) mmol/kg, またATPは2.15±0.14, 2.26±0.22, 2.71±0.06 (p<0.01vs対照群) mmol/kgであった.
    脳虚血作製後にNC-1100を持続投与することにより, 脳血流の改善が促進され, また脳虚血による代謝障害が軽快される所見が得られた.
  • 竹内 郁男
    1991 年 13 巻 5 号 p. 352-360
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    脳塞栓症14例, 脳血栓症8例の各病期のIMP-SPECT の delayed image (DI) を経時的に検討した.脳塞栓症では亜急性期 (8から28病日) に, DIでアイソトープ核種 (RI) の梗塞巣内への高集積が高頻度に認められ, その出現頻度は同じ時期の血栓症に比して有意に高かった.また塞栓症と血栓症ではDIの梗塞巣内のRIの集積パターンが異なり, 塞栓症では梗塞巣全体が高集積を示したのに対し, 血栓症では辺縁の一部が高集積になるのみであった.亜急性期にみられる塞栓症と血栓症のDIの梗塞巣内の集積の差は, 両者の病態の差を反映するものと考えられた.塞栓症の病巣内高集積は発症後の一定の期間のみ出現し, 血管再開通の時期, 出血性梗塞, 他の臨床所見, 基礎疾患との関連はなかった.
  • 自験4例の検討
    東 邦彦, 坂井 文彦, 五十嵐 久佳, 田崎 義昭
    1991 年 13 巻 5 号 p. 361-366
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    既往に片頭痛を持つ若年者に脳梗塞が発症した4例につき, 脳梗塞の危険因子としての片頭痛の意義につき検討した.症例1はmigraine with auraの発作中, 脳梗塞が発症したと考えられ, その病態としては前兆の原因となる脳血管攣縮が遷延し脳梗塞に移行したと考えられた.症例2~4の3例はmigraine without auraの患者で, 脳卒中発作は発症様式, CT, MRI所見よりはいずれも脳塞栓症と診断され, 脳塞栓症に頭痛が前駆あるいは随伴した可能性が考えられた.そのうち2例は妊娠中の発症であった.migraine without auraに脳梗塞が発症した機序としては, 片頭痛が脳梗塞に移行したというよりも片頭痛にもとづく血小板凝集能の亢進による5HT, ノルエピネフリンの放出, エストロゲソをはじめとする性ホルモンの変動による凝固系の亢進などを介して脳梗塞の危険因子となった可能性が考えられた.
  • 特に症候性血管攣縮に関連して
    小田 真理, 下田 雅美, 佐藤 修, 津金 隆一
    1991 年 13 巻 5 号 p. 367-372
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血 (SAH) において症候性血管攣縮 (SV) の発生時期にあたる亜急性期の手術成績をSVの発現との関連を中心に検討した.対象はSAH 533例中, 亜急性期に直達術を施行した54例 (SA群) とし, 早期手術例 (E群) : 272例, 待期手術例 : 95例, 非手術例 : 112例を比較対照群とした.全症例を通じてのSVの発生頻度は37%であるが, SA群では44%と最も高率であった.またSVの発生時期はE群では91%が術後Day3~10に集中し, SA群ではSVの83%が術後Day1~4の早期に発生した.SA群のSV発生率は入院時CT上のFisher分類group1, 2においても決して低値を示さず, 来院時のWFNS分類が不良である程術後より早期にSVを来す傾向にあった.他群と比較した来院時のWFNS分類別予後は, Grade1~2で予後良好例の比率が最も高値を示したが, 逆にGrade3~4では最も低値であり, SA群における予後不良因子としては入院時WFNS4, Fisher分類3~4, 脳内出血随伴例, 術後早期のSV発現が挙げられた.
  • 金子 尚二, 澤田 徹, 栗山 良紘
    1991 年 13 巻 5 号 p. 373-377
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    非回転性めまい, 中でも血圧低下に伴う症例の脳循環動態面よりみた病態を明らかにする目的で検討を行った.対象は, 日常生活において頻回に非回転性めまいを自覚する群 (A群) :4例, 急性降圧時において非回転性めまいを自覚した群 (B群) : 6例, および急性降圧に対してもめまいを自覚しなかった群 (C群) : 6例, 計16例で, それぞれの平均年齢は, 67, 52および57歳である.安静時脳血流量 (CBF) はArgon吸入法を用い測定した.症例によっては, 頭部挙上およびArfonad®微量注入を行い, 徐々にかつ段階的に降圧し, 血圧低下に伴う脳血流変化率は脳動静脈血酸素含量較差法により算出した.C群では, CBFおよび脳酸素消費量 (CMRO2) は正常範囲内であった.A群では, CBFおよびCMRO2は有意な低下が認められ, 慢性的な脳低灌流状態にあると考えられた.B群では, CBFは低下しているにもかかわらず, CMRO2は正常域にあり, 血圧低下時の脳への酸素供給予備能の減少, すなわち相対的な脳低灌流状態にあることが示唆された.
  • 高松 和弘, 滝沢 貴昭, 佐藤 昇樹, 佐能 昭, 大田 浩右
    1991 年 13 巻 5 号 p. 378-384
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    虚血性脳血管障害を合併した真性多血症 (以下PV) 5例, 本態性血小板増加症 (以下ET) 2例について臨床的に検討した.主要徴候では頭痛4例, 脾腫6例, 心筋梗塞2例, 四肢動脈血栓症1例を認めた.PVの1例はaspirin内服中に混合型脳出血で死亡し, 他の1例は合計5回の脳虚血発作を認めた.PVのCT所見は皮質枝, 穿通枝梗塞の両型を認めたがETでは穿通枝梗塞は認められなかった.MRI所見はCT所見とほぼ同様であったがETの1例は陳旧性脳出血巣を認めた.MRIは治療法の決定に際して有用と考えられた.治療では抗血小板療法中には血小板凝集能, 出血時間などをモニターして脳出血を予防することが必要である.また, thiamphenicol療法は外来通院で行うことができ, 虚血性脳血管障害を伴うPVやETの一部では抗血小板療法と併用することで臨床管理に有用な治療法の一つと考えられた.
  • 山崎 昌子
    1991 年 13 巻 5 号 p. 385-393
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    心原性脳塞栓症 (E) と脳血栓症 (T) の凝固線溶動態の相違を検討する目的で, E群38例, T群63例と年齢を対応させた患者対照 (C) 群23例において急性期 (第7病日以内), 亜急性期 (第14~28病日), 慢性期 (第29病日以後) の各期毎にfibrinopeptide A (FPA), thrombinantithrombin III complex (TAT), antithrombin III (ATIII), protein C活性値および抗原量 (PC), fibrinopeptide Bβ15-42 (FPBβ15-42), D-dimer, α2 plasmin inhibitor-plasmin complex (PIC) の比較を行った.急性期にはE群ではT群よりもTAT, D-dimerが有意に高値, PCが有意に低値であり, 亜急性期にはFPA, FPBβ15-42が有意に高値であった.D-dimerは慢性期にもE群ではC群よりも有意に高値であった.E群ではT群よりも凝固線溶系が高度に活性化されており, E群における心内血栓形成を主に反映し, 今回測定した分子マーカーの中では特にTATとD-dimerが病態把握に有用であると考えられた.
  • 山上 岩男, 礒部 勝見
    1991 年 13 巻 5 号 p. 394-399
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    脳底動脈における病的拡張・蛇行はmegadolichobasilar anomaly (MBA) と総称されている.MBAは, 椎骨脳底動脈系の脳虚血症状, あるいは隣接する脳神経や脳幹部の圧迫症状により発症することが多いが, クモ膜下出血 (SAH) を起こすことは稀とされている.われわれは, MBAの破綻によりSAHを起こし, 水頭症に対する脳室ドレナージや脳室腹腔シャントなどの治療にもかかわらず, 繰り返すSAHによって死亡したMBAの1例を経験したので, 若干の検討を加えて報告する.破綻したMBAに対する直達手術は, 手技的に困難なことから, 1例の報告もないが, 椎骨動脈のproximal ligationと頭蓋内外物吻合術の組み合わせは, MBAの血流動態を変化をさせることにより, MBAの破綻によるSAHの再発を予防することが可能と考えられた.
  • 山本 正昭, 溝口 強美, 篠原 弘一, 坂上 明彦, 朝長 正道
    1991 年 13 巻 5 号 p. 400-404
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    くも膜下出血急性期には高率に心電図異常が出現するといわれている.我々も一過性の洞不全症候群を呈した症例を経験した.症例は63歳女性, 前交通動脈瘤の破裂によるくも膜下出血で, 神経学的には意識混濁の状態であった.入院時の心電図は正常洞調律で, QTU延長がみられる以外には異常はなかったが, 発症40時間頃より心拍数40/min以下の高度の徐脈が出現し, 3秒以上の洞停止と洞不整脈がみられた.Atropineに対して反応しないため, 一時ペーシングを行い, 第3病日に開頭動脈瘤クリッピング術を行った.この症例では, 検査所見より弁膜疾患や心筋自体の器質的障害が否定され, また徐脈は急性期に一過性で消失しており, その後繰り返し行われた24時間ホルター心電図および電気生理学的検査の結果より刺激伝導系の機能に異常はみられず, くも膜下出血にともなった中枢性不整脈と診断した.
  • 川副 信行, 江藤 胤尚, 峰松 一夫, 山口 武典, 柊山 幸志郎
    1991 年 13 巻 5 号 p. 405-409
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    Wallenberg症候群を主要症状とした, 一過性脳虚血発作の頻発例を経験した.症例は63歳の男性で, 頻発する回転性めまい及び右眼窩部痛を主訴として入院した.非発作時には理学的にも神経学的にも特記すべき異常はなかった.発作時には右Horner症候群, 嗅声, 嚥下障害, 右顔面と左上下肢の温痛覚低下及び右小脳性失調, 即ちWallenberg症候群を呈していた.発作の持続は10分から30分で, 毎日1~3回出現した.発作には特定の誘因となるものはなかった.頭部CT, MRIでは異常なく, 脳血管造影では右椎骨動脈はほぼ完全に閉塞し, 右後下小脳動脈は造影されなかった.短期間で著効を示した薬剤はなかったが, 脳梗塞に進展することなく, 初回発作出現1年後に発作は出現しなくなった.この間の発作回数は合計400回に及んだ.本症例は一過性脳虚血発作の主症状がWallenberg症候群であったという点のみならず, その発作回数の頻度の点においても稀な症例と思われた.
  • 斎藤 桂一, 溝井 和夫, 吉本 高志
    1991 年 13 巻 5 号 p. 410-416
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    延髄・頚髄移行部の動静脈奇形2例と髄外動脈瘤1例に直達手術を行い, 良好な結果を得た.症例は46歳から65歳のいずれも男性で, 3例ともクモ膜下出血で発症し, 通常の脳血管撮影では出血源の発見が困難であった.文献的に同部位の血管病変の報告は少なく, 希なものと思われた.本論文では自験例の提示と共に, これまでの報告例とあわせて, 同部位の血管病変についてその発症様式, 診断法, 治療に関する考察を加えた.
  • 川畑 信也, 杁山 あつ子, 片山 雄一, 成田 眞康
    1991 年 13 巻 5 号 p. 417-422
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    脳梗塞と拡張型心筋症, 血小板減少症を示す抗リン脂質抗体症候群の1例を報告した.症例は45歳の男性, 伝導失語で発症.左総頚動脈造影にて中大脳動脈主幹部の狭窄と分枝閉塞を認めた.また右椎骨動脈造影では脳底動脈の先細り状の狭窄および両側後大脳動脈と上小脳動脈の硬化性変化が目立ち, 本症候群に伴う血管病変を示唆するものと考えられた.文献的に抗リン脂質抗体症候群は若年発症の脳梗塞の成因となりやすく, 臨床的には主幹動脈の血栓性閉塞または一過性脳虚血発作を示すことが多い.自験例の脳血管病変も本症候群が示す血管病変に合致するものであった.また自験例では左室腔拡大と左室収縮力の低下がみられ, 拡張型心筋症の合併をみた.抗リン脂質抗体症候群に合併する心疾患としては心筋梗塞や心内膜疾患の報告が多い.本症候群に心筋症を合併したとする報告は過去1例のみにみられ極めて稀な合併疾患と考えられ報告した.
  • 正門 光法, 井林 雪郎, 松井 敏幸, 佐渡島 省三, 藤島 正敏
    1991 年 13 巻 5 号 p. 423-427
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    上肢の骨形成不全に先天性心疾患を合併するHolt-Oram症候群に脳塞栓症を併発した稀な一症例を経験した.症例は54歳, 右利き, 男性.生下時より左上肢の奇形を除けば正常発育であったが, 20歳時に初めて心房中隔欠損症 (ASD), 動脈管開存症 (PDA) を指摘され, PDAの切離術を受けた.38歳時にASDの閉鎖術, 45歳時には心房細動並びに徐脈発作のためにペースメーカー挿入術を施行された.平成元年4月10日, 正午ごろ, 電話中に突然意識障害, 左片麻痺が出現し入院となった.頭部CTスキャンでは右前頭葉から右側頭葉に低吸収域を認め, 一部に高吸収域の部分も認められた.心電図上は心房細動, ペースメーカー調律を呈していた.心エコーでは左房内に明らかな血栓は認められなかったが, 臨床経過ならびに梗塞巣の部位等より脳梗塞症と診断した.塞栓源として, ASD, PDAの術後であること, 心房細動, ディマンド型のペースメーカーの失調に起因した血栓形成の関与が強く示唆された.
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