抄録
Megadolicho-Basilar Artery例の経過中に解離性動脈瘤を生じ, 右前下小脳動脈症候群を呈した症例を報告した.症例は64歳の男性で眩量, 強度の右耳鳴から入院となった.神経学的には, 構音障害, 注視方向性の眼振, 右末梢性顔面神経麻痺, 左伝音性難聴, 右聴力消失と耳鳴, 右軟口蓋麻痺, 舌の左側偏位, 不全四肢麻痺, 顔面を含む左側での全知覚低下を認めた.X線CTでは脳底動脈が拡張, 蛇行し, 橋を圧迫している解離前の所見に加え, 解離後のCTでは脳底動脈壁に器質化した壁在血栓を認めた.MRIでは解離後にT2強調像にて高信号で示される右前下小脳動脈領域の梗塞を認めた.脳血管撮影では左椎骨動脈i撮影の静脈相にて脳底動脈に造影剤の貯留を認めた.Megadolicho-Basilar Arteryと解離性動脈瘤は両者とも動脈硬化が基盤にあると考えられるが, 両者の合併は未だ報告がなく, 貴重な症例と思われた.