1992 年 14 巻 1 号 p. 98-102
左半身に典型的なhemiballismを来した74歳男性を報告した.不髄意運動は睡眠中は消失していたが, その極期には覚醒すると精神的興奮および運動にて増強し, さらに嚥下障害を伴い, 患者は著明な消耗状態を呈した.hemiballismに対してはhaloperidolは無効でchlorpromazineが有効であった.右後大脳動脈起始部閉塞を認めたが, SPECTでは脳血流の低下はなく, 29病日の10mm sliceと78病日の3mm sliceの頭部CTでは責任病巣は描出できなかった.43病日のMRIにて不髄意運動と対側 (右側) の視床下核の梗塞が確認された.CTの出現とともに視床下核以外の病巣によるhemiballismの報告が散見されるが, 責任病巣を検索する場合にはCTによる検索のみではなく, MRIによる検討も必要であると考えられた.本症例では激しい不髄意運動のため全身の消耗が激しく, さらに嚥下障害による嚥下性肺炎を併発し, 中心静脈栄養を含めた全身管理が必要であった.