脳卒中
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前頭葉底部病変で健忘症候群を呈した脳動静脈奇形の1例
前島 伸一郎宮本 和紀板倉 徹林 靖二駒井 則彦
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1992 年 14 巻 1 号 p. 87-92

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抄録

前頭葉底部への出血により健忘症候群を呈した, 脳動静脈奇形の1例を報告した.患者は17歳の右利き女性で, 意識障害のため近医を受診し, 脳室ドレナージ術を施行された.脳血管写で前大脳動脈および前交通動脈より流入する脳動静脈奇形と診断され, 根治手術の目的で当院に転院した.初診時, 意識は清明で, 時間や場所に関する見当識障害を認めた.また, 一般知識, 即時記銘, 遠隔記憶などは保たれていたが, 前向き健忘に由来する近時の記憶障害は高度であり, また軽度の逆行性健忘を合併した.脳神経系に異常を認めず, 麻痺や知覚障害も認めなかった.CTでは, 右前頭葉側面とくにrectal gyrusからcingulate gyrus, subcallosal areaに血腫を認めた.全摘出後5ヵ月で記銘力障害は改善を認めたが, 軽度の前向き健忘は残存した.本症例では, AVMからの出血によるseptal-hippocampal damageによって, 記憶系の回路に障害を生じたものと考えた.

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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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