抄録
温型自己免疫性溶血性貧血を合併した脳梗塞症の1例を経験したので報告した.症例は74歳男性で, 右不全片麻痺と言語障害を主訴に意識レベル10 (JCS) にて来院した.CTスキャンにて左側頭葉から前頂葉にかけて低吸収域を認め, 脳梗塞と診断された.入院時一般検査で溶血性貧血を指摘され精査の結果, Coombs試験 (直接・間接) 陽性であり, また原因となるような薬剤の服用の認められないことから, 特発性自己免疫性溶血性貧血と診断された.出血凝固系では血漿フィブリノーゲン値の高値が, また血小板機能では凝集能の亢進が認められた.数種類の自己抗体が陽性であった.患者はその後軽度の右不全片麻痺を残すのみで約2ヵ月で退院となった.脳梗塞で発症した自己免疫性溶血性貧血は稀であるので, その機序について出血凝固線溶系・血小板機能と血栓症との関係を中心として若干の考察を加え報告した.