1996 年 18 巻 3 号 p. 236-240
チクロピジン服用後, 急激に進行した血栓性血小板減少性紫斑病の1例を報告する.患者は55歳女性, 一過性脳虚血発作のためチクロピジンの投与を開始した.投与後3週間で右片麻痺と構語障害の再発のため入院した.入院後3日目, 血小板1.4万であり, トロンビン時間, 部分トロンボプラスチン時間, フィブリノーゲン, FDP等の凝固線溶系は正常であった.翌日嘔吐を伴う腹痛が出現した.入院後6日目, 全身性痙墓が起こり, ヘモグロビンは7.4g/dl, 血小板1万以下そして血清クレアチニンは1.6mg/dlとなった.末梢血スメアでは多数の破砕赤血球を認めた.血小板減少, 発熱, 腎症状, 神経症状, 細血管性溶血性貧血により血栓性血小板減少性紫斑病と診断した.ただちに血漿輸注ならびに血漿交換を開始したが, まもなく死亡した.
本症例は, 血栓性血小板減少性紫斑病の発症にチクロピジンが関連したと考えられる日本における最初の報告である.