脳卒中
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急性期脳梗塞症例に対する瀉血療法およびその病態生理学的検討
栗山 良紘澤田 徹山口 武典古家 仁
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1980 年 2 巻 4 号 p. 309-315

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抄録

頻発する左片麻痺の増悪発作で発症した脳梗塞症例において, 発症当日血液Htの高値と血液酸素解離曲線の左方移動の傾向をみとめた.汚血によるhemodilutionをおこない血液Htの低下をはかったところ, 脳血流量の増加に伴なって左片麻痺の増悪発作はすみやかに消退し, その後局所神経症状を全く認めない状態にまでなった.また発作中に炭酸ガス吸入をおこないhypercapniaにすると脳血流量の増加に伴なって発作は消退し, 過呼吸をせしめhypocapniaにすると脳血流量の減少に伴なって左片麻痺の増悪をみた.第4病日には血液酸素解離曲線は代償的に右方移動しており, その時点では過呼吸をせしめても発作は認めなかった.
本例の脳梗塞発症の病因としては血液濃縮にもとずく脳循環障害と, 血液酸素解離曲線の左方移動傾向によるoxygenreleaseの低下が重大な役割りをはたしており, hemorheologicalな瀉血療法が著効を示したと考えられる.

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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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