脳卒中
Online ISSN : 1883-1923
Print ISSN : 0912-0726
ISSN-L : 0912-0726
クモ膜下出血急性期例における抗線溶療法のmonitoring (t-AMCA scoreの有用性)
西松 輝高柴崎 尚佐々木 秀夫貫井 英明川淵 純一
著者情報
ジャーナル フリー

1980 年 2 巻 4 号 p. 316-325

詳細
抄録

破裂脳動脈瘤急性期における抗線溶剤の至適投与量を決定する目的で髄液の線溶活性を短時間に再現性をもって測定できる方法を考案し, これによってえられる値をt-AMCAscoreと名づけた.髄液はクモ膜下出血を呈した9例において346検体を採取し, 抗線溶剤としてt-AMCAを1日4~69持続点滴静注した.得られたt-AMCA scoreの推移を髄液中抗線溶斉膿度および髄液FDP値の推移, 髄液の1日平均排出量と比較検討した.髄液中抗線溶剤濃度は髄液排出量と負の相関を有し, 蓄積効果を認めた.t-AMCAscoreは投与中ほぼ一定の推移を示し, 投与直後2時間および投与中止後3日目にrebound friinolysisを認め, 発症後1週前後で強い線溶亢進を疑わせる所見を認めた.髄液FDPはt-AMCA scoreが5以上で12時間以上持続すると0に近づき4以下で6時間以上持続すると出現した.
t-AMCAscoreを用いた髄液線溶能低下の程度を短時間に測定する方法を考案し, 9例のクモ膜下出血例で髄液線溶活性の変動と抗線溶剤投与量, 髄液中抗線溶剤濃度, 髄液FDP値を比較検討し以下の結果をえた.
t-AMCAを1日4~69持続点滴静注すると髄液中t-AMCA濃度とは関係なく, ほぼ同様なt-AMCA scoreの推移を認めた.
髄液中t-AMCA濃度は髄液排液量と負の相関を有し, 髄液排液量が1日平均150ml以下では投与量と正の相関を有した.髄液中FDP値の推移からt-AMCA scoreを5~6に維持する抗線溶剤の投与量が必要最低量と思われた.
今後更に症例数を重ね, 髄液FDP値などの相関から各病態時期に応じた抗線溶剤の至適投与量について追求していく方針である.
本論文の主旨は,第37回日本脳神経外科学会総会(1978. 10. 20), 第4回日本脳卒中学会総会 (1979.2. 2), 第20回日本神経学会総会(1979. 5. 10), 第26回日本臨床病理学会総会 (1979. 10. 13), で発表した.

著者関連情報
© 一般社団法人 日本脳卒中学会
前の記事 次の記事
feedback
Top