脳卒中
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脳血管障害による脳幹病巣
臨床所見とCT像
本藤 秀樹吉田 良順曽我部 紘一郎上田 伸松本 圭蔵
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1980 年 2 巻 4 号 p. 355-363

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抄録
脳血管障害による脳幹病巣の23例 (出血15例, 梗塞8例) について, 予後の面から激症型, 重症型, 軽症型の3型に分類し, その臨床症状および重症度とCT像との関係について比較検討した.脳幹症候群のうち “locked-in” syndromeが4例, Foville症候群が3例, Millard-Gubler症候群が2例みられた.また異常眼球運動としてMLF症候群, skew deviation, 共同偏視が各々2例に, bcular bobbing, 0ne-and-a-half syndromeが各々3例にみられ, これらはいずれも一過性であった.このような臨床症状はCT上の病巣とよく対応した.重症度とCT像については, 出血の大きなもの, 両側性に及んでいるものは激症型, 重症型にみられ, 激症型は全例第4脳室に穿破していた.一方, 軽症型は限局性で片側性の小さなものであった.梗塞例でも, 病巣が両側に及んでいるものは重症型で, 片側性の小さいものは軽症型にみられる傾向があった.
1) 出血か梗塞か不明であった1例を除き脳橋を中心とする脳幹出血15例, 脳幹梗塞8例計23例について, CT像を基盤に臨床的検討を加えた.
2) 出血例のうち軽症例が5例 (33.3%) と従来の報告より多く, その診断はCT検査によるところが大であると思われた.
3) 臨床症状として脳幹症候群のうち “locked-in” syndromeが4例, FoviUe症候群が3例, Millard-Gubler症候群が2例みられ, 定型的脳幹症候群は梗塞例に多かった.
4) 異常眼球運動は共同偏視, MtF症候群, skewdeviationが各々2例に, ocular bobbing, one-and-a-halfsyndromeが各々3例にみられたが, いずれも一過性であった.
5) これら神経症状とCT像はほとんどの症例でよく一致したが, 一致しないものでは後頭蓋によるartefact, スライス角度, CTの解像力, partial volume phenome-non, CTの施行時期, 病巣周囲の浮腫等が影響しているものと思われた.
6) 予後によって出血例, 梗塞例を各々激症型, 重症型, 軽症型に分類し, 初期CT像との問題を検討した.出血例では病巣の大きなもの, 両側性にあるもの, 第4脳室に穿破したものは激症型, 重症型にみられ予後不良であった.梗塞例でも病巣の大きさと予後との間には, ある程度の相関がみられたが, 出血例ほどはよく一致しなかった.
本論文の要旨は第20回日本神経学会総会 (昭和54年 5月9日) で発表した.
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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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