1998 年 20 巻 4 号 p. 421-425
77歳男性.起床時より嘔気,嘔吐,ふらつき,複視が出現し,歩行が不可能となった.眼球症状として,左眼の内転障害,右眼の外転位,両眼の輻輳障害,交代性外斜視を認め,その他の症状として右手掌と右顔面にしびれ感(dysesthesia)を認めた.右眼の外転位は正面視では第7病日にはめだたなくなったが,上方視,下方視では著明であった.この外転位は退院時(第16病日)にもわずかに存在していた.また,交代性外斜視は第12病日にはほとんど消失していた.左眼の内転障害と輻輳障害は,改善は認めるものの退院時(第16病日)にも残存していた.MRIにて,橋上部の左側傍正中部被蓋にT1強調像で低信号,T2強調像で高信号を呈す,新しい梗塞巣が確認された.病側眼の内転障害,輻輳障害および交代性外斜視を呈した機序としては,高度にMLFが障害されたことに伴う対側PPRFの過興奮が原因と考えられた.