1983 年 5 巻 2 号 p. 150-154
肺大細胞癌による脳内多発性腫瘍塞栓の1剖検例を報告した.手術を誘因としない自然発症の脳内腫瘍塞栓は, 本症例 (第75回日本神経学会関東地方会発表) が本邦はじめてであった.
本症例は呼吸不全により死亡したが剖検上, 右内包後脚および橋右腹側部に軟化巣を認め, 同部の動脈内に肺と同一腫瘍組織による閉塞所見を認めた.
欧米の文献上みられた脳内腫瘍塞栓25例を検討したが, 脳塞栓を生じる原発腫瘍としては肺癌および絨毛上皮腫が多く, 手術を誘因としない自然発症の腫瘍塞栓例では多発性の小梗塞を呈しやすい傾向がみられた.また, 本疾患としてはじめてのCT所見も合わせ報告した.