ウイルス
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特集1 [第51回ウイルス学会学術集会シンポジウム
「ポストゲノム時代のウイルス学」]
1. ウイルス感染細胞のトランスクリプトーム解析
渡辺 慎哉
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2004 年 54 巻 1 号 p. 23-31

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抄録
ヒトゲノムプロジェクトは, その成果として, かつては約10万と推定されていたヒト全遺伝子が3万数千~4万種類の遺伝子座から構成されることを明らかにした. さらに, 塩基配列の解明そのものに加えて, 初めて生命現象を全体として俯瞰・解析できるシステムの開発も促した. その代表がDNAマイクロアレイである. この技術を用いることにより, ほとんどすべての遺伝子の発現状態 (トランスクリプトーム) を一度に解析すること (トランスクリプトーム解析) が可能となった. マイクロアレイで得られる知見は, 極論すると, 遺伝子発現レベルを唯一の指標とした, 数値による生命現象の記載・記述である. これにより, 我々ウイルス学者は, ウイルス感染細胞内でおきている現象の全体像を初めて探究できるツールを手にしたといえる. ここでは, 各種ウイルスを代表してヒトサイトメガロウイルス (HCMV) を取り上げる. 我々が独自に開発した合成DNAマイクロアレイシステムを用いて取得した, ウイルス感染細胞のウイルス遺伝子および宿主遺伝子の同時並行かつ包括的な発現プロファイルを例にウイルス感染細胞のトランスクリプトーム解析を紹介する. さらに, 複数種類のウイルスと複数種類の細胞の組み合わせを同一プラットフォーム上で比較解析する 「細胞応答の比較ウイルス学」 を提案する. ある特定のウイルスを各種細胞に感染させるとき, あるいは, ある特定の細胞に各種ウイルスを感染させるとき, ウイルスによる違い・細胞による違いがあるのかないのか, あるとすればそれはどのようなものか, が明らかとなるはずである.
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© 2004 日本ウイルス学会
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